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顔だけ男は眠り姫の呪いをかけられる  作者: 里和ささみ


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女帝の独白

胸クソ回です。

よろしくお願いしづらい話です。

メリーはずっとイライラしていた。


騎士団でたくさんの騎士から睨まれたときは落ち込んだが、時間が経つとまた腹が立ってきた。


ここ数日、ずっと考えていた。


なぜ自分の息子が恨まれなければならないのか。


どう考えても悪いのはやはり女たちではないか。


恨まれていたのは事実だが、騎士たちの逆恨みだ。


レベッカもそうだ。


せっかくエリオットの嫁になれるというのに、何が不満なんだ。


商人に向いてないというが、そんなの言い訳だ。


あの子はすぐに知らない、教わってない、分からないと匙を投げる。


そんなの、自分の努力が足りないだけだ。


エリオットを好きになれなかったのは劣等感があるからだ。


自分を高める努力もせずに、恵まれたエリオットに嫉妬していたのだ。


あの子は甘えてばかり。


自分に甘いのだ。


トラウマがなんだ。


克服する努力をしないからだ。


いつまで経っても地味で根暗で、吃りも気持ち悪かった。


年頃になってもエリオットに女として見てもらえないのも当たり前だ。


それなのにあの子のせいでエリオットは店の跡継ぎから外された。


許せない。


マックスもだ。


あの子の言い分を鵜呑みにして、私に商会をやめさせて!


しかも、自分にあの子の両親に謝れと言う。


明日は首根っこを掴んででも連れて行くからな!などと言う。


どうして私が謝らなければならないの。


謝るのは向こうじゃないか。


娘の教育がなっていなくて申し訳ありません、と。


それなのに謝れだなんて、夫は頭がおかしいんじゃないか。


私は間違ってない。


実家でも、長女というだけで色々押し付けられた。


嫁に来て、やっと自由になれた気がした。


夫がいて、仕事があって、大店(おおだな)の女将として雇い人に(かしず)かれる。


年下だけではない、自分と同年でも、年上でも。


人が自分の思い通りに動くのが楽しかった。


客が自分の勧めた物を購入していくのは快感だった。


たまに押し売りだと文句を言ってくる客もいたけれど、夫やニールがどうにかしてくれた。


買うと決めたのは客自身なのに、いいがかりもいいとこだ。


幾度目か、夫にもう店に立たなくていいと言われた。


長女のサマンサを産んだ後、久しぶりに仕事に出た頃だった。


ニールの入れ知恵だと知ったときは腹が立った。


あの男は最初から気に食わなかった。


マックスと婚約して、店に入ったとき、私に仕事を教えたのはニールだった。


ニールは優秀だった。


先代の信頼が厚かった。


私が何かの提案をしても、夫は先代に話を通す前にまずニールに相談した。


信じられなかった。


私が間違ったことを言うわけがないのに。


ニールに反対されると、その話はいつも立ち消えになった。


数少ない私の上に立つ男が、私の夫が、私以外の誰かに動かされる。


裏方に回された頃の私はまだ跡継ぎになる男の子を産めていなかった。


仕方がない。


なんとか飲み込んで、我慢した。


数字と向き合うのは嫌いではなかった。


答えが明確なのが美しい。


少しして、ようやく跡継ぎの長男エリオットを産めた。


産まれたてでも美しい男の子だった。


輝いて見えた。


この子のために生きよう。


立派な跡継ぎに育てよう。


私は人を動かすのが上手い。


私になら出来る。


初めて自分以外の誰かのために何かをしてやりたいと思った。


それが必ずこの子のためになると思った。


大店の跡継ぎで、しかも美しいエリオットを子に持つ私は、他の母親から羨望の眼差しを受けた。


たまらなく気持ちよかった。


いつしか、娘を持つ母親からは侮蔑の眼差しを向けられるようになった。


娘がエリオットに弄ばれたと言うのだ。


美しいだけの中身のない娘たちが勝手にエリオットに入れ上げただけなのに。


あの娘たちならまだレベッカの方がマシだ。


本人には価値がなくても、父親のジェフがついてくる。


あれは金の成る木だ。


商会として逃してはならない。


婚約が決まったとき、母親のリンダが偉そうなことを言ったが、娘の出来は悪かった。


あの女が甘やかすから、あの子はあんな根性なしになった。


教育し直してやっただけでもありがたいと思ってもらいたい。


それなのに、なぜか私が責められた。


私はあの子を正しく導いてやろうとしていただけなのに。


幸せな時間はあっという間に終わってしまった。


たかだか二十年ほどしか続かなかった。


イライラする。


どうしてみんな私の思う通りにやらないの。


そうすれば、みんな幸せになれるのに。


どうしてみんな私を否定するの。


みんなが間違ってるのに。


私は間違ってない。


私は間違ってない。


メリーは呪文のように繰り返した。

よくぞここまで読んでくださいました。

本当にありがとうございます。

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