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顔だけ男は眠り姫の呪いをかけられる  作者: 里和ささみ


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18/90

王子様はズタボロ

アクセス解析を見るたびにいろんな項目の数字が増えていて、とても嬉しいです。感想もお待ちしております。

今回もよろしくお願いします。

「ね、姉さん、ごめん……」


「何が悪いのかも分かってないくせにかんたんに謝らないで!!」


エリオットは何も言えなくなってしまった。謝っても、何をしても、姉が許してくれることはないと感じ取った。


エリオットは今まで人から悪意を向けられても嫉妬しているのだと断じてきた。そういう星の元に生まれついたのだから仕方のないことだと思っていた。


人の感情なんて移ろうものだから、その時に怒り心頭でもいずれは忘れるものだ。相手もそのうち忘れるから気にしなくていいと母が言っていた。


エリオットが特別だから、普通の人間が劣等感を抱いているだけなのだと。そんな感情はその場限りのものだから、気にするだけ無駄だと。


みんなは忘れてなんかいなかった。捨てた恋人も、奪われた男も、レベッカも、言わないだけで、エリオットのことを恨んでいた。


だから、眠り姫の薬を飲まされたのだ。


スージーが集めた軍資金は、エリオットに恨みを持つ女だけでなく、男からも集められていた。そのことを知る由もないが、少なくともスージーは自分を恨んでいたのだと、今ようやく理解出来た。


愛ゆえの暴走だと思っていた。確かにそうかもしれないが、憎しみが勝ってしまうくらいに、エリオットは恨みを買っていた。


エリオットは産まれた時からメリーの呪縛に囚われていた。エリオットが特別なのはメリーにとっての特別なのに、世界において特別なのだと言い聞かせてきた。


その結果、今のように自己肯定感が歪んだ形で育ってしまった。


自分は恨まれている。


途端に、恐ろしくなった。世界中が己の敵のように思えてきた。


ましてや、手元の契約書によれば、魔女と騎士団が現実として敵に回っている。本当に戦いはしないが、社会的に抹殺される未来が待っている。


「確かに、妬み嫉みは男の勲章と言ったりもするがな、お前には中身がないんだ。見てくれなんていつかは衰えるものだ。いつまでも使えるわけじゃない。今まではウチの跡取りって肩書きもあったが、それも消えた。ますますお前には何も残らない。」


エリオットは衝撃だった。もしかしたら、一番の衝撃かもしれない。容姿はいずれ衰える。考えたことがなかった。


エリオットを狙う女たちの中には容姿のアドバンテージが消えた後にも残る肩書きを重視する者も多かった。そういう女たちは見切りをつけるのも早い。自分の物にならないのなら、切り捨てて次に向かった方がいい。


エリオットを恨まず別れられたのはそういう女たちだ。恨みを残した者は、それだけ愛情も深かったのかもしれない。


「お前はジェフに近いのかもな。あいつはそもそも悪意に気付かない、お前は悪意をなんとも思っていない。相手としてはどちらも無視された形になる。結果としては同じだ。そんなの、相手を余計怒らせるだけだ。お前に至っては善意すら当然のことと受け止める。感謝がなければ、恨まれても仕方がない。」


エリオットはただひたすら父の話に耳を傾けていた。


特別だと思っていた自分は、むしろ何も持たない、顔だけの男なのだと実感した。それですら、いつかはなくなる。


恐怖と焦燥が渦巻くエリオットの頭の中に浮かんだのは、婚約者だったレベッカの顔。


エリオットはレベッカに怒鳴ったことはない。そもそも、エリオットは他人に対して怒りを見せたりしない。たまにムッとしたり、イラッとしたりはするけれど、そんな感情は一瞬で通り過ぎる。メリーにそうしろと教わった。


あなたは、いつも、どんな時も、そこにいるだけで素晴らしい存在なのだから、誰かの言う悪口なんて気にしないで、自信に満ちた態度でいなさい、と。


だから、感情を揺らすことがあっても、すぐに笑顔に戻れた。次第に自分の感情の動きに興味がなくなり、他人の感情は更に瑣末なことだった。自意識過剰な王子様の出来上がりだ。


レベッカの瞳は心に振り回されていつも揺れていた。何かに怯え、恐怖していた。


それは、自分に対する劣等感からだと思っていた。


振り回される弱さが悪いのだと思っていた。


強さに繋がる自信がないのが憐れだと思っていた。


レベッカはそれら全てを自分ではない誰かに不当に奪われていた。エリオットもその誰かの一人であることにようやく気が付いた。


そして、彼女から一番自信を奪っていたのが、自分の母親だ。エリオットの基礎を作り上げた母親だった。


エリオットは、自分の精神の土台が重い物が載れば潰れてしまうような、脆く拙いもので作られた空き箱であることを知った。


エリオットの自尊心という箱は、今まさに、責任と罪悪感という荷物で潰れ、ひしゃげていた。

エリオットざまぁはこれにておしまいです。


サイレントクレーマーのことを調べていたら、グッドマンの法則というのがあることを知りました。接客業のアルバイト経験があるので内容は聞き覚えのあるものでしたが、法則に名前があることを知らなかったので驚きです。改めて勉強になりました。


次回はレベッカの両親が出てきます。


最終話は固まってるのに、合間を直しすぎてなかなか終わりません。見切り発車はよくないですね。


お読みいただき、ありがとうございました!

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