あわてんぼう探偵
美千代とサトルが屋敷を出て一時間くらいが経った頃だろうか、屋敷の大広間に足音が響き渡った。
「先生、大変です」
声を上げて、走ってくるのは清だ。彼は外の様子を見ると言って、大広間を抜け出していた。
「先生、大変です」
息を切らしながら、清が広間に現われる。広間にいる幸子、佐橋、義男の三人は緊張して顔が強張っていた。
「どうした? 清くん」
敬助が落ち着いて尋ねた。
「死体が……」
清の言葉が続かない。
「死体がなんだ?」
敬助が続きを促した。
「死体が消えているんです」
「死体が消えた? きみは何を言っているんだ」
「先生、本当です。屋敷の庭にあるはずの、神主さんの死体がないんです。屋敷にあった大八車もありません。犯人はまだ島にいる。事件は、まだ終わってないんですよ」
そう言って、清はハッとする。
「やっぱり女と子供二人だけでは心配だ。伝えないと襲われてしまいますよ。先生はここをお願いします。ぼくは港へ行ってきます」
言い終わらないうちに、清は大広間を飛び出して行った。敬助も大広間を出ようとするが、佐橋がすぐさま呼び止める。
「金田一先生、どちらへ?」
「確認してくる」
そう言って、敬助は大広間を後にした。
敬助が玄関から庭へ回った時、すでに開いた雨戸から顔を出す佐橋と幸子の姿があった。二人は敬助が来る前に、庭に神主の死体がないことを確認していた。
「金田一先生、これは一体、どういうことでしょうか?」
佐橋は、敬助の到着を待って話し掛けた。探偵は、返す言葉がないといった感じだ。
「やはり犯人の仕業でしょうか? 警察が到着する前に、死体を隠してしまったということではないんですか?」
佐橋が一人で喋るのだった。敬助は、佐橋の言葉に一切返事をせずに屋敷の中へ戻った。
そこで、さらなる事件が起こっていた。大広間にいるはずの義男の姿がなかったのだった!




