その7
「お願いだから、う、ご、い、てぇぇぇ」
二人の双子の姫は手を取り合って、顔を赤くしながら剣を握り締めている。メタルアームの動作音も高くなっていた。
「ゼブラ!! まだ動いてこないよ! マジ本気出してる!?」
青白く放電する剣は応えるかの様に光を放つ。
「もう少し、踏ん張って、も、ち、あ、げ、てぇぇ!!」
フロアに振動が伝わり、室内は渦を巻いたように荒れた。
「リオン、もっと力を入れるのだ!」
支えるアデンのティアラが飛んで、丸く結ってある髪が解ける。璃緒と同じ様に乱舞した。髪と肌の色や瞳の発色さえ違えど向かう姿に、違いはない。
「お姉ちゃん、体を私にくっつけて!!」
アデンの白い肌が重なり合うと、心臓の鼓動すら同一化してしまう錯覚を璃緒は覚える。ゼブラから発せられる雷とは別の有機体が二人を取り巻く。ひとつの受精卵から分かち合った生命たちが、同じ目的で再びひとつになっていく。
「何と言う一体と恍惚感……。そちと融合するようだ」
思わずアデンは吐息を洩らした。
光剣の持つ手に漲る力が、璃緒の全身に行き渡っていく。
「ゼブラがアデンを認めたのは、これを待っていた」
赤褐色の瞳が透明感のある赤色に変化し、その奥にあるもう一つの光彩が聞いた。
古から継承されてきた宇宙を征する血筋。すなわち、二人に刻まれた『ゼブラ』を制御する遺伝子。それが今、全てに増強され飽和していく。
開いた光彩の先に何かが佇む。魅せられる瞳がそれから離れない。ゆっくりとそれが近付く。黒でも白でもない。
「ゼブラじゃ、ない」
璃緒は息を飲む。瞬きをした次の瞬間、その者はすぐ側にいた。耳元で囁く。
ー汝、宇宙の未来を継ぐ者なり……ー
「え」
声がした方向に頚を傾けると、今度は目の前にいた。全身が眩しく輝いている。
ー汝、宇宙の根源ー
「根源、何なの。あなたは誰」
その問いには応えなかった。遥か遠くから、メッセージを伝えているよう感じだ。男とも女とも言えない中性的な感じである。そもそも人なのか。
ー汝は、全ての源ー
視界に小さな光の粒が浮かぶ。それは宙を舞う鳥の羽根、いやもっと軽いケセランパサランのように、ふわりふわりと璃緒の手元に漂う。そしてそれは手を翳すと、吸い寄せられてきた。
ー汝、発動すー
手掌に転がる光の粒は、やがて璃緒の中に溶け込んでいく。
次に目を凝らした時には、何もなかった。
「全ての源、ビッグバン……」
突然、大きな揺れを体感する。
「リオン、何をしている! しつかり力を入れぬか!!」
我に返った璃緒は、アデンを見て振りかぶった。
「この漲る力……。大いなる力動」
光剣を握りしめると眩い光がより一層輝き始める。深く腰を屈め、一呼吸した。
「絶対、みんなを守るんだから!! お姉ちゃん!!」
「リオン!!」
互いに瞳を合わせ、息を止める。二人が持つ剣がついに真上を向いた。




