その13
ー起きぬか、リオン!!!!ー
頭の中を射ぬかれたように声が反響した。咄嗟に脳裏に顔が浮かんでくる。
「あ、でん……」
ーリオン、『ゼブラ』をそちの下僕にするのだ!ー
アデンの声が璃緒の意識を清明にしていく。
ー『ゼブラ』ような征服者に、我らの宇宙を渡すことはない!ー
微かに目が開いた。その瞳は眼前の者を睨む。
ーそちは言ったではないか。この宇宙は誰のものではないとー
「……誰の、もの、でも、ない」
更に首が締め付けられ、璃緒の息が再び詰まった。
ーリオン、そちの想いを思い出せ。目覚めるのだ、リオン!!ー
これまで右側だった赤色の瞳が、左側も同じ様に光り始める。『ゼブラ』は上体を仰け反った。
その左右の瞳は『ゼブラ』の炎とは比較にならないほど眩しく、灼眼となる。
「百瀬の両親や、友人、私は、みんなを守りたい。地球を守りたい……」
同時に、彼女は『ゼブラ』を更に睨み返した。
「離せ、『ゼブラ』」
その赤黒い腹部を蹴り上げる。だが微動だにしない『ゼブラ』は言う。
「ぬしは、誰だ。名を伝えよ」
「私はおまえの主、『ザベリン・ミリディア・ア・リオン』」
突風が吹き荒れた。暗闇に目映い光が差し込み、真っ白な空間に変化する。
『ゼブラ』は璃緒の体をゆっくり床に立たせた。彼女はひと咳して言葉を発する。
「主として使命を与えます」
『ゼブラ』は璃緒の足元に躓く。
「おまえの機能は、全て私が制します」
赤黒く炎に包まれた者は静かな面もちに見えた。その姿は人を模し、黒から白へ輝いて変化していく。長い黒髪を翻し、青白い肌と黒いコートのようなものを着こなし、白ズボンに黒いブーツを履いていた。切れ長の瞳は赤黒い光彩に規則的に白色が混じっていた。
璃緒の指先から青い電撃のようなものが走り、それは全身を痙攣させる。
「我は、主の命尽きるまで従おう」
彼女は安堵してか、両肩が脱力し、そのまま床に座り込んだ。璃緒は両手を広げる。指間から青白い炎のような小さい放電が起こっていた。
「まだ残ってる……」
彼女は一度それを握り込んで、再び開く。
「……アデンの声が聞こえた」
目の前に『ゼブラ』はまだ躓いていた。
「で、あんたは、一体何処から出てきたのよ」
「前主は、最後の命令を我に託した」
璃緒は目を丸くして、その白く変化した者を見る。
「主を見定めよと」
体を起こし、『ゼブラ』は彼女の隣に立ち並ぶ。
「我は主とともにある。我を動かすのは、この時より『ザベリン・ミリディア・ア・リオン』に変わった」
驚いて彼女は『ゼブラ』を凝視した。
「じゃあ、王妃は……、どうなったの。いなくなったってことは……」
「主との対話に、相当のエネルギーを費やした。前主は脳機能の一部の回路を遮断しておる」
不可解な問答に璃緒は口を尖らせる。
「ど、どう言う意味?」
「眠っておる」
「そ、そう……、そう言うこと」
璃緒は胸を撫で下ろす。
ふと、まだ頭の中に聞こえる怒号に気が付いた。瞳を閉じ、息を整える。
ーリオン、『ゼブラ』の落雷を止めい!!!ー




