その6
陥没していく表層の下からゆっくりと角たちが、時として流体になり、うねりながら這い上がって来ていた。その尖端から放電しながら角の羽を広げ、雄叫びを上げようとしている。その姿に、リュークは半ば恍惚した表情で見入っていた。
「『怒れる雷』」
突き出した角はアイリス星の地表に『怒れる雷』を放ち続け、あらゆるものを一掃し、壊滅した地下都市を押しつぶしながら上昇している。
「やがて漆黒の征服破壊要塞が地表に浮上する。古より受け継がれてきた呪わしき遺産。起動したならば、この世界の終わりが来る」
隣で険しい顔で睨むアデンの顔があり、その拳が震えていた。
「あの『雷』は、地表はおろか星全体も砕き貫いていく」
地面が大きく振動し泥沼のように地表が波打ち、全員が足元を掬われる。
「いったい、どのようにすれば、あれを止めることができるのでしょうか」
「簡単だ」
不敵な程、アデンは口角を吊り上げた。
「あの翼に近づいて乗り込み、リオンを正気に戻して、あ奴に『ゼブラ』を静止させる」
その場にいる誰もが、その発言に目を丸くして固まる。
「無茶だ。あんな落雷の中、地面も陥没しているのに近づけるか。いくら隙間を縫って行こうとも、歩いて辿り着かないよ」
悲鳴に近い声でカラトバは横から叫んだ。
「誰が歩いて行く、と言った」
「じゃ、じゃあ、どうやって」
「おまえのシュナイダーで、正面から翼へ高速で突っ込む」
聞いた男はひっくり返る。
「幸いシュナイダーはバリアが張れる。『ゼブラ』のすぐ側まで辿り着けば、さすがに『雷』も出来まい」
「む、無理だ……」
そしてアデンは鼻息を鳴らした。
「リオンが正気を取り戻さず、我々に気づかなければ、それまで。気づけば、あ奴は『ゼブラ』を治めることが出来るだろう」
「なんと、大胆な」
リュークはその思い切った考えに驚嘆し、メイラムに目配せする。
「では我々も、お供いたします」
男とメイラムは頭を深く下げた。
「お、おい!! ちょっと、アデン! 僕のシュナイダーを壊す気か!」
「多少の間違いであっても、おまえがリオンをここに連れてきて、覚醒させたのだ。男として責任を取れ」
状況を楽しむが如く、彼女は大笑いをする。
「君は正気じゃないぞ!」
今度は顔を真っ赤にしてカラトバは怒号した。
「転送は私の艦より、シュナイダーへは遠隔操作が可能です」
「だったら直接、それで行けばいいじゃないか!」
叫ぶ男を横目にリュークは姿勢を正す。
「先程付近を調査しましたが、『ゼブラ』の放電界は装置の限界値を乱す状態です。転送すれば足が着く前に、身体は消し飛びます」
「そ、そんな!!」
叫びを通り越してカラトバは、またしても絶望の悲鳴を上げた。
「ではカラトバ殿、エンジン始動をお願いいたします」
目を伏せ頭を下げてリュークは声を掛ける。
「お、おい! 誰がそんな事に……」
止めるような仕草のカラトバの姿が、一番先に消えていった。
荒れ狂う放電は、天空をも切り裂いている。
「今でなくとも、いずれはこうなったかも知れんがな」
アデンは呟く。




