23話
悲鳴と雄叫びが入り混じったようなカズヤの大声の中、その人物はゆったりとした足取りでやって来ました。
「さすがはSランク剣士様だ。太刀筋すら見えませんでしたよ。ああ恐ろしや、恐ろしや……」
腕が転がり、血が噴き出しているその現場で、少しおちゃらけたような声を発したのはレードン警部でした。手に持つランプの光が、不気味ともいえる苦笑いを浮かび上がらせています。
「警察! お前、警察だな!?」
「そうですよ」
「何をしてるんだ、助けろ、俺を助けろ! 俺を誰だと思っている……! 腕を斬られたんだ! 頭のおかしい暴漢に腕を斬り落とされた! 助けろ、今すぐ助けろ!」
カズヤは光明を見つけたかのような笑顔を浮かべ、血の吹き出す腕を反対側の手で押さえながら、必死に言葉を絞り出しました。
「この世は弱肉強食なんですよ」
カズヤが見たのは、レードン警部の薄ら笑いでした。この男は味方ではない――カズヤははっきりと悟りました。
「この件は、もうとっくに国王陛下のお耳に入っているんですよ。侯爵程度がどんなに頑張っても、これは揉み消せません。なんたって王女様への襲撃事件だ。これは国を揺るがすほどの大スキャンダルですからね」
カズヤの瞳が、恐怖で大きく見開かれました。
「縛り首か、鉱山送りか。どちらにせよ、今後は平民を馬鹿にする余裕なんてなくなるでしょうな。――おっと、もう聞こえていないようですな」
足に力が入らなくなったカズヤはバランスを崩し、自ら地面に叩きつけられるように倒れ込みました。
「はっ、はっ、はっ……」
短い呼吸を繰り返すカズヤの顔面は、みるみる蒼白に染まっていきます。
「安心してください、ちゃんと病院には連れて行ってあげますよ。ひとりの死人も出さない計画ですからね。もっとも……貴方の将来に希望なんかありません。いま死んでおいた方が楽だったと思うことになるでしょうがね」
彼を見下ろすレードン警部の瞳は驚くほど冷淡で、そこには一片の慈悲も存在していませんでした。
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