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22話

 


「くそっ、なんでこんなことに……!」


 少し離れた建物の角から様子を窺っていたカズヤは、計画の失敗を察知して即座に踵を返しました。


 しかし、逃げ出そうとしたその瞬間、背中に凄まじい衝撃が走りました。蹴り飛ばされた体は、受け身も取れぬまま道筋の真ん中まで転がっていきました。


「逃げようたって、そうはいかないぞ。いざ、尋常に勝負しろ!」


 そこに立っていたのは、抜身の真剣を手にしたクリスでした。転がっているランプの光りを反射する刃が、冷酷なまでに美しく輝いています。


「何者だ貴様! 俺を誰だと思っている! 侯爵家だぞ、グラナード侯爵家の長男だぞ!」


 カズヤは地面を這いながら、必死に権威を振りかざして叫びました。


「だから?」


 子供が問い返すような、あまりに無邪気で冷淡なクリスの声。 その直後、視界の端で何かが「ぼとり」と地面に落ちる音がしました。


「え………?」


 反射的に足元を見たカズヤは、自分の目を疑いました。そこには、つい先ほどまで包帯で吊っていた、自分の左の肘から先が転がっていたのです。


「もうとっくに、勝負は始まってるんだぞ」


 クリスが言葉を言い終えると同時に、切断面から滝のような鮮血が溢れ出し、地面を赤く染め始めました。


「ぎ、ぎゃあああああああああーーー!!」


 夜の静寂を切り裂くような絶叫が響き渡ります。


 少し離れた場所からは、角材で滅多打ちにされている悪友たちの鈍い音と悲鳴が聞こえてきましたが、今のカズヤにはその音さえ届いていませんでした。


 ただ、自分の身に起きた信じがたい現実と、目の前に立つ「死神」のような男の恐怖に、全神経が支配されていました。





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