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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
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出会いと共に~

 正一は橋を自転車で渡り終え、右折した。右折した一本道の両サイド坂になっていて、正一の身長より高い雑草が坂を下りた所に辺り一面に広がっていた。

 皆、今頃頑張って戦ってるんだろうな。ま、俺はその間勝手気ままにここら辺で寝そべっているつもりだけど。

 自転車を置き、坂になっている地に仰向けで寝そべった。

 思えば一年前もこうしてこの地に来ては寝そべったっけ。なつかしいな。最近はここへは来なかった。あのことが遭ってからは一度も。

 嫌な記憶は一生残ってるものだが、楽しかった記憶は案外忘れてしまう。俺はこの大草原であいつと何をしていたかあまり覚えていない。ただ、俺とあいつはいつもここにいたことだけは覚えている。二人いっしょにいた。二人だけの場所だ。でも、それは一瞬の出来事であったかのように失われてしまった。だから、俺はこの場所に来ることはなくなった。無性に悲しくなるから。でも、やっぱり俺はこの場所が好きなんだ。久しぶりに来て改めてそう思う。

 正一は空を見上げながら、数十分間、過去のことを振り返っていた。

 そういえば、高倉と林は何してるかな今頃。

 ポケットから携帯電話を出してアドレスを確認した。

 二人ともまだ生きている。もし、倒されたのなら、アドレス帳にLOSTという文字が表示されるから。去年もそうであったから。高倉に連絡してみようかな。暇だし。

 ボタンを押して、携帯電話を耳に当てた。

「もしもし」

 高倉が電話に出たのである。

「もしもし、哀川だけどそっちはどうだい。元気でやってる?」

 正一は調子に乗って言った。

「何が元気でやってるだ。今こっちは戦闘の真っ最中なんだよ。お前は今、どこで何してるんだ」

「今、一人で空を眺めてる。今日はいい天気だね」

「何がいい天気だ。ふざけるな。こっちは敵があっという間に公園に攻めてきたんで防衛に忙しいんだ」

「何、簡単に防衛ラインを突破されてんだよ。お前の責任だぞ」

「ふざけるな。何がお前の責任だと、何が防衛ラインだ。そんなもん始めからないくせに」

 高倉はかなり興奮しているようだ。まあ、俺が調子に乗ったことばっかり言ってるからムカついているんだろう。

「林はまだ生きてる?」

 正一は分かっている答えを質問した。

「ここにいて、敵に攻撃してるところだよ」

「まだ死んでねーのか」

 正一はわざと残念そうに言った。

「何残念そうに言ってんだよ。お前、敵に寝返ったのか」

「俺がそんなことするものか。何を証拠に」

 正一はわざとらしく言った。

「だってお前、去年は頭いいチームだったじゃん。裏切ったって不思議じゃないよ」

「何馬鹿なことを言ってるんだよ」

 去年、俺は鮎喰や坂田たちと同じチームだった。正直嫌でたまらなかった事を今でも覚えている。あと、友達と敵同士ってのは微妙な感じがしたことも。

「とにかく、俺は忙しいからまたな」

 高倉はイラつきながら電話を切った。

 高倉は去年よりは長生きしている。去年は全学年の中で一番最初に倒されたもんな。

 正一は携帯電話をしまい、空を見上げた。そのままうたたねをしそうになったが我慢して、目を閉じ続けた。

 しばらく、そのままじっとしていると、本当に眠りそうだったので正一は慌てて目を開けた。すると、見知らぬ女子生徒が哀川の顔を覗き込んでいた。

「こんなところで何してるの?」

 キャップ帽を被っているその女子生徒は、俺と同じジャージの色をしているので、同じチームであることは分かったが、それ以外、分からなかった。

「あんた、誰?」

 哀川は気分が悪くなったので、冷たく訊いた。正一は人見知りが強いのでつい冷たい言い方で接してしまう。

「そんな言い方ないでしょ。誰かって訊いただけじゃない」

 彼女は険しい顔をしながら怒った口調で言った。

「あっち行けよ。昼寝してるんだから」

 正一は再び眠りにつこうしたが女子生徒に邪魔された。

「あっちいけよって、いいじゃない私が近くに至って。もしかして、照れてる?」

 何なんだ、この女は。どうしてここにいるんだよ。せっかく一人になりたかったのにさ。でも、この女を見てるとあいつを思い出してくる。誰だこの女は?

「何で君なんかに俺が照れなきゃならないんだ」

 正一はつい本音を言ってしまった。これも正一の悪い癖で、空気を読む時と読まない時がある。本音をそのまま口にしてしまうことがほとんどであるが。

「ちょっと冗談言っただけじゃない。なに本気にしてるのよ」

 彼女は少し笑いながら、正一をコケにした。

「何でもいいけど俺の前から消えろよ」

 正一は正直な気持ちを言葉に出したが、彼女は笑っているばかりで相手にせず、正一の隣に腰を下ろした。

「ねえ、どうして皆と戦わないでここにいるの?」

 彼女は正一のことは一切気にせずに訊いた。

 正一はこの空気の読めない女子生徒を無視しようとしたが、また何か言われるのが嫌だったので答えた。

「面倒だから」

 本音は、できるだけ長く生き残りたいであるが、あえて嘘をついた。

「面倒なら自爆すれば」

 彼女はずけずけと言ってくる。正一はますます腹が立った。

「面倒くさい」

「簡単じゃない。銃を自分に向けて引き金を引くだけよ」

 彼女はどんどん正一を追い詰めていった。

「ほっといてくれよ」

 正一は同じチームのこの女子生徒を銃で倒したくなったが、必死で我慢した。

「あ、そうか。リタイヤしないように敵が少ない所で時間を稼いでるんだ。あーやだやだ、そういうの卑怯者って言うのよね」

 普通の男子ならここで怒り狂ってしまうだろうが、俺はそんなことはしない。ただ、この女が目障りなので、味方を倒すだけだ。

 正一はベルトにしまった銃を取り出そうとして、右手で銃を握ろうとしたその瞬間、別の所からレーザー光線が飛んできた。

「敵だ。くそー何でここにいるんだ。皆俺の邪魔しやがって」

 正一は自転車には乗らずに坂を下っていった。その後に、彼女もついて来たが、必死になって雑草の中に向かっている正一にとってはどうでも良いことであった。

 二人が下り坂を全力疾走で走ったために、敵の攻撃が当たらなかった。しかし、敵はD地区の東側に五人いたので、物理的には不利であった。

 草むらの中に入った二人は必死でその中を進んでいった。草むらは先ほどの一本道と同じに沿って広がっていたので、隠れるには適した場所であった。

 ブライトフューチャーズが何でここにいる? D地区の西側に転送装置三番があったはず。でも、彼らは俺らの東側からやってきた。何でだ。分からない。もしかして、シークレットアイテムとか言うやつを使ったのか。くそー、考えてなかったぜ。

「これからどうするの?」

 後ろについてきた彼女が行ったので

「とりあえず、西に逃げるけど西には転送装置があるから、敵がたくさんいるだろうし。ある程度まで走ってそこからは適当に考える」

 どうして、敵があそこにいるか分からない。移動するにも時間がかかるはずなのに。

 二人は草を掻き分けながら西に進んだ。先ほど攻撃してきた敵も追ってきてる。

 このまま逃げても逃げ切れる自信があるが、うまく隠れながら敵を倒すこともできる。

 正一は足を止め、敵の位置を把握するために体勢を低くして敵がどこにいるかを確かめた。

 結構後ろにいる。ここは逃げ切った方がいいかもしれない。

 正一は改めて向きを変え、再び西を目指して走り始めた。彼女もいっしょになって正一の後を着いて行った。

 こんなに本気で走ったのは久しぶりだ。なんだか楽しい。体育の五十メートル走よりよっぽど楽しい。体力もまだまだ持つし、逃げ切れる。でもあの女は俺の走りについて来てるかな。

 正一は一瞬だけ顔を後ろに向いた。すると、彼女も正一のスピードについて来ていた。

 俺の走りについてこられるとは。やるな、この女。

 二人はスピードを落とさずに走り続けた。


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