第4話 第四世界という選択
俺が死んだ事故。
その原因は、あのチャラ男。
……とはいえ。
事故は事故だ。
故意じゃなければ、ただの不運だろ。
なのに。
天使の言い回しは、どこか引っかかる。
まるで――
「先にお伝えしておくべきことがあります」
俺の思考を遮るように、天使が口を開いた。
「魂とは、“器”を持ち、三つの世界を循環する存在です」
また、説明か。
正直、半分くらい頭がついていかない。
隣を見ると、チャラ男は明らかに顔色が悪くなっていた。
対して、あの女性は――
変わらない。
「魂は増減を繰り返しながら、三世界を経由して輪廻します」
「分かりやすく言い換えましょう」
わずかな間を置いて、天使は続けた。
「第一世界は“天国”」
「第二世界は“地獄”」
「そして第三世界が──あなた方のいた“現世”です」
……なるほど。
つまり、俺たちは前世の結果で行き先を決められる、ということか。
「違います」
即座に否定された。
……やっぱり聞こえてるだろ。
「ここは三世界のいずれにも属しません」
「そして“行き先を告げるだけの場所”でもありません」
その言い方に、少しだけ背筋が冷える。
「本来、魂は因果によって複雑に絡み合っています」
「しかし、それが歪なままでは――次の器に収まらない」
……何を言っている?
理解しようとすればするほど、逆に遠ざかっていく。
ふと見ると、チャラ男は完全に黙り込んでいた。
さっきまでの強気は消え、
ただ青ざめた顔で話を聞いている。
女性は。
やはり、動かない。
「そこで、あなた方のような“歪んだ魂”には」
「再定義と、整形の機会が与えられます」
……整形?
「あなた方に付与される“真逆の運命”」
「それは第四の世界において行われます」
第四の世界。
その言葉の響きが、妙に重かった。
「そこでは絡み合った因果を解き」
「偏った魂を均す」
均す、か。
要するに――
「……俺たちは、このままだと輪廻に戻れないから」
「一度“調整される”ってことか?」
口に出した瞬間。
天使が、わずかに笑った気がした。
「その解釈で問題ありません」
認められた。
その事実が、逆に気味が悪い。
「そして、もう一つ」
空気が変わる。
今までとは、明らかに違う重さ。
「これは非常に重要な前提です」
――嫌な予感がした。
「今、説明してきた内容はすべて」
「“自ら器を放棄していない”ことが前提です」
……え?
「つまり」
わずかに間が落ちる。
「自ら生を絶った者は」
「第四世界への移行も」
「輪廻への復帰も許されません」
……。
「その魂は消滅します」
音が、消えた気がした。
「苦しみも、恐怖もありません」
「ただ、存在が無くなるだけです」
その瞬間。
――ガタッ
初めて。
あの女性が、大きく震えた。
今まで一切動かなかった彼女が、
まるで何かに怯えるように。
……天使が、そちらを見た気がした。
いや。
“見ている”。
明確に。
――まさか。
この中に。
“それ”がいるのか?
その答えを確かめる前に──
俺たちは。
この後、信じられない話を聞くことになる。




