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死んだはずの俺は言われた。『あなたもその事故の原因です』  作者: 神北 緑


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第2話 天使と“真逆の運命”


現実感のない白い空間で、天使は淡々と話を続けていた。

語られている内容は理解不能なはずなのに、

なぜか、不思議と意味だけは頭に入ってくる。


「まず、ここから進む場所では──」


「皆さんが生きていた状況と“真逆の運命”が付属されます」


……真逆?


意味が掴めないまま、思考が浮かんだ瞬間。


「は? なんの話してんだよ。分かるように言えって」


あのチャラい男が、苛立った声で割り込んだ。


天使は、特に気にした様子もなく応じる。


「あなた方は、第三世界での生を終え、次の世界へと移されます」


「これは“生まれ変わり”ではありません」


「現在の年齢、肉体、すべてを維持したまま移行されます」


「だったら“真逆の運命”ってなんだよ」


男はさらに食い下がる。

声には、わずかに苛立ちが混ざっていた。


天使は淡々と続ける。


「そこで与えられる“授かり物(ギフト)”のことです」


「初期ステータス、と説明すれば理解しやすいでしょうか」


「だから分かりにくいんだよ」


舌打ちでもしそうな勢いだ。


それでも天使は、声色ひとつ変えない。


「簡単に言えば──」


わずかに間を置く。


「これまでの人生で“幸福が大きかった者”は、不幸な状態から」


「逆に“どん底にあった者”は、恵まれた立場からのスタートになります」


……なるほど。


言われてみれば分かるが、

どうにも釈然としないルールだ。


「じゃあさ」


気づけば、俺は口を開いていた。


「良くも悪くもなかった奴は?」


極端じゃない人間なんて、いくらでもいるはずだ。


天使は、わずかにこちらへ意識を向けたようだった。


「その場合は、前回と大きな差のない状態からの開始になります」


「ただし──」


言葉がわずかに重くなる。


「“完全な公平”というものは存在しません」


「誰もが、多かれ少なかれ、不均衡を抱えているものです」


……なんとなく、こちらを見られた気がした。


「そのあたりは、移行先で確認していただくことになります」


「つまり、後は“お楽しみ”ということですね」


軽い調子の言い方。


なのに、妙に逃げ場がない。


「ちょっと待てよ!」


チャラ男が一歩前に出る。


「俺はな、大手ゼネコンの次男坊だぞ?」


胸を張って言い放つその態度に、

思わず呆れかける。


……そういうタイプか。


「で? どうなるんだよ」


当然のように問いかける男に対し──


天使は、ほんの一瞬だけ間を置いた。


「……お察し申し上げます」


その声は、どこか“真顔”だった気がする。


「は?」


空気が一瞬で張り詰めた。


「なんだとコラ!」


昂る男。


だが天使は、微塵も揺れない。


「そもそも──」


静かに、言葉を落とす。


「ここにいる三人は」


「あなたが“生を閉じさせた”結果として集められた存在です」



――は?


思考が、一瞬だけ止まる。


何を言っている?


事故だろ?


あれはただの──


「因果応報、というやつです」



……ちょっと待て。


意味が分からない。


俺が?

俺たちが?


誰かを──?



ふと、横を見る。


チャラ男は怒りで顔を歪めている。


だが。


あの女性は。



何も言わない。


最初からずっと、ただ静かに立っている。


驚きも、怒りも、疑問も見せない。



まるで──


全部、知っているみたいに。



その瞬間、さっきまでなかった“違和感”が、一気に膨れ上がった。



……何かがおかしい。



ここに来て、ようやく。


俺の中に、まともな疑問が浮かび始めた。

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