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死んだはずの俺は言われた。『あなたもその事故の原因です』  作者: 神北 緑


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第12話 あなたに欠けているもの


「似ている――」


その一言が、静かに三人の間へ落ちた。


波紋のように広がり、やがて――重なる。

気づけば、お互いの過去が流れ込んできていた。


どんな経緯でここに至ったのかも、説明される前に理解している。


なのに――言葉は交わしていない。

視線すら、ほとんど交わしていないのに。


「気が付きましたか?」


天使が、穏やかに問いかける。


「皆さんの共通因果が、“孤独”であることに」


――見られている。

視線という感覚がないはずなのに、確かに“俺”へ向いていると分かる。


「そして、あなたに欠けているものの正体……」


静かに、しかし確実に突き刺さる声。


「あなた以外の因果は“流された”ものです。止められなかった――理由は様々ですが、その果てを、どこかで想定していた」


「自覚がなくとも、選択していたのです」



空間全体に、声が反響する。


やけに――大きく。


逃げ場がないことを、思い知らされるように。


「見ない、ということは。運命を手放すことに似る」


「“選ぶ”という概念の根本。それが、あなたには欠けているのです」



――驚きは、なかった。


薄く、確かにあったからだ。

その自覚が。


ただ――

見ないようにしていただけだ。


その方が楽だったから。



三人は、無言で互いを見る。


落ち着かない。


どこにも居場所がないような、不安定な視線。


誰もが同じ顔をしていた。



「歪な形も、幾分かは整いましたね」


ふいに、話が切り替えられる。


「第四世界へ送るにあたり――あなた方の魂は歪みすぎていた」


「そこの器にすら、収まらなかったのです」


白しかないはずの空間が、わずかに圧迫感を帯びる。


逃げ場が、狭まる。


「孤独がどれほど魂を歪めるか……理解できましたか?」


「ここで行ったのは、次の器に“最低限”収まるための調整にすぎません」


理解とも違う感覚が、じわじわと染み込んでくる。


――そして、


こいつは、笑っている。

間違いなく。


「……でも」


沈黙を破ったのは、あの女性だった。


「私は……私は、無くなるのよね……?」


声は震えているが、不思議と崩れない。


「なら……なんで、一緒に調整される必要があるの……?」


その疑問は、自然だった。


俺も、チャラ男も――同じことを思っていた。


確かにそうだ。

ただ苦しめただけじゃないか。


意味もなく。



「フフッ……」


――笑った。


今度は、確実に。


「それくらいの楽しみがなければ……」


「ここには、娯楽など何も無いのですから」


背筋が、冷える。


「こちらの立場も、多少は考慮していただかないと」


――意味が分からない。


いや、理解したくないだけか。


「……」


こいつは――最初から。


俺たちの嘆きを、眺めていただけなのか。


三人の中に、同じ感情が広がる。


こいつは天使なんかじゃ無い

悪魔だ!!


白い存在は、淡々と続ける。

「ハズレです」


「そもそも私は、この空間とあなた方の認知を借りて“そう見せている”にすぎない」


その輪郭が、僅かに明確になる。


初めて――“表情”らしきものが浮かんで見えた。


「天使や悪魔など、想像の産物です」


「私の存在は、魂の理解領域には収まりません」



――もう、限界かもしれない。


気を失えた方が、どれほど楽か。


だが、その逃避すら許されない。

薄く残された感情だけが、意識を繋ぎ止める。


「待て!!」


空気を裂くような怒声。

チャラ男だった。


「それなら納得できねぇ理由があるッ!!」


初めて、明確な“意志”が空間を揺らす。


「――おい」

「そこのあんた」


その目は、もう軽薄でも何でもなかった。

「違和感に、気付いてるか?」


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