↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだはずの俺は言われた。『あなたもその事故の原因です』  作者: 神北 緑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/13

第11話 似ているもの


「……似ている?」


思わず、言葉が漏れた。


女の掠れた声が、頭に残る。


――何が似ている。


何の話だ。



隣では、さっきの男が叫び、


目の前では、女が泣き崩れている。


……だから、なんだ。


関係ない。


俺には。


「……どうでもいい」


真逆の世界だか何だか知らないが。


好きにしろよ。


どうせ、全部終わってる。



――ふと。


記憶が、引っかかった。


……あの時。


なんで、あんなに焦っていたんだ?



「……」


思い出せ。


あの日。


俺は――



ATMに向かっていた。



日付が変わる前に、

振り込みを済ませなければならなかった。


アクセルを踏む。


スピードを上げる。



――その時。


前方で、バスが動いた。


停車していた車体。


右ウィンカーが点滅している。



「くそ……!」


「早く行けよ……!」




――


そもそも、なんで俺がこんなことになってるか?


……そんなの、決まってる。



俺は、大手ゼネコンの次男だ。


生まれた時から、何でもあった。


金で手に入るものは、全部与えられていた。



金の価値も。

使い方も。


全部、ズレていた。



それが“普通”だった。




でも。


俺には兄貴がいる。



あいつは、本物だ。



誰が見ても優秀で、


親父はあいつに全部を叩き込んだ。


会社を継がせるために。



そしてあいつは、

それに完璧に応えた。




じゃあ、俺は?




必要ない。




表に出さないだけで、


それは分かっていた。




俺に与えられていた物は、


「役割」じゃない。


「体裁」だ。




兄貴が継げば、


俺に金を与える理由も、意味もなくなる。




その時、俺は――


何もない。




能力も。


実力も。


人脈すら、


“金に群がる連中”だけだ。




だから。



やめられなかった。



金を使うのを。


見栄を張るのを。



それしか、


“俺”を証明するものがなかったからだ。




気づけば。



止まらなくなっていた。



カードは尽きる。


それでもやめられない。




そして――


行き着いた先が、闇金だ。



大手の金融を使えばすぐバレる。


CIC、JICC、KSC。


全部、記録に残る。



でも、闇金なら違う。



「名前」が信用になる。



借りられる額も、桁が違う。


そして――


返さなくていい額じゃない。



一気に、綱渡りだ。



利息だけ払い続ける。



延命。




――あの日も。


その延命の一日だった。




そして。



俺は、気づけばバスを追い越していた。



焦りしかなかった。



前を見る余裕なんて――



なかった。




車線に戻る。


その瞬間。



――人影。



視界に、飛び込んでくる。




避ける?


無理だ。


もう遅い。




衝突。



鈍い音。




ハンドルがぶれる。


車体が流れる。



ガードレールに激突。



視界が回る。




そして。



横を向いたその先に――



バス。




――そこで、終わりだ。




……。




「……」




目の前の男が、女を見ている。


何かを、理解した顔だった。




俺には、関係ない。




どうでもいい。




――本当に?




その問いは。


初めて。



ほんのわずかだけ。


自分の中から、湧いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。