第一章 沈まぬ太陽 第五話
透路から遅れること数分。定食を食べ終わった累水が杏仁豆腐へと手を伸ばした。
ここの杏仁豆腐はとろとろ食感に仕上げられていて、濃厚で美味しいのだ。
一足先に食べ終わっていた歩真は、一緒に頼んでいたコーラをのんびりと飲んでいる。食事のお供としてはお茶か水しか飲めないタイプだが、食後用にと毎回何かしらの飲み物を頼んでいる。
透路と累水はあまり食事中の飲み物に拘りはないが、大抵お茶か水がセットでついてくるのでそれで済ますことが多い。
「そういえば、前の時って結局どんなきっかけで太陽が沈まなくなったんだっけ?」
累水も全ての食事を終えて、それぞれに飲み物を飲みながら一息を吐いていたタイミングでふと思い出したように歩真がそんな疑問を口にした。
前、というのはそのまま素直に捉えて、直近で太陽が沈まなくなった時のことを指しているのだろうけれど、不意に上げられた歩真の疑問に二人揃って首を傾げる。
この仕事に就いてから、過去の事例については全て確認していた。流石に一から十まで内容を覚えていることは出来ないが、それでも今後の参考になりそうなことは頭に入っているつもりだ。
きっかけとされる物事の正否はともかく、恐らくこうだろうという推論は報告書に記載されていることが多い。
と言っても必ずというわけではなく、核の浄化には成功したものの、実際の事件事故と魔物の性質、核の場所などの繋がりから推論を導けなかった場合は記載されない。
「そういう情報は書かれてなかったはずだから、たぶん推論が立たなかったんじゃないかな」
「太陽が沈まない、つまり夜が来ないってことは明日を迎えられないってことで現状維持を望む心によるものだろうってなったらしいけど、核があったあの公園で何かがあったわけじゃないみたいだからね」
あまり情報がない中で現状維持という見解が累水と一致しているのは、流石毎日魔物の核となる誰かの心に触れようと思考を回しているだけはある。
この前提がズレてしまうと次の対応も空回って状況が長期化してしまうので、透路たちが行うこの検証はかなり重要だ。
重要なのだが、結構ふんわりとした議論の跡しか残っていないことも少なくない。
沈まぬ太陽はまさにそれだった。




