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第53章   お前の気持ちはどうなんだ

このお話を開いてくださった方ありがとうございます!また、ずっと読み続けてくれている人本当にありがとうございます!いつもランダムの時間で投稿していましたが、明日から夜の9時と11時のどちらも、もしくはどちらかにしようと思います!引き続きお願いします

 教壇から眺める教室は、いつもと変わらない騒がしさだ。だが、その中心にいる佐倉の、どこか心ここにあらずな横顔が、俺の胸をチクリと刺す。

(……ったく、どいつもこいつも、ままならねえな)

 ひろは、俺にとって唯一無二の親友だ。あいつが「美代」を亡くしてから、どれだけ抜け殻のような日々を過ごしてきたか、一番近くで見てきたのは俺だ。あいつには幸せになってほしい。心の底からそう願っている。

だが、教師としての俺が、あるいは「一人の男」としての俺が囁く。

……お前は本当に幸せにできるのか?と。

 それに、花沢だ。あいつはあの七香の息子なんだ。それに、ずっと聞いていた。それこそあいつが無自覚な時から、鈍感な俺ですら気づいちまうくらい目で追っていた。

 将来を考えれば、花沢といる方がいい。教師と生徒なんて危なすぎる。それに、ずっと想い続けてくれる幼馴染がいるんだからそっちの方がいい。

「……佐倉。ちょっと、昼休み時間あるか?」

 チャイムが鳴り、生徒たちが一斉に動き出す中、俺は佐倉を呼び止めた。驚いたように肩を揺らす彼女を連れて、屋上へと続く人影のまばらな踊り場へ向かう。

「……先生、お話って?」

 不安そうに俺を見上げる佐倉。

「……お前にとってひろ、じゃなかった、本原先生ってどうだ?そして、花沢螢一はどうだ」

 俺はあえて、畳み掛けるように聞いた。

「本原は、頼れる教師か? それとも、それ以上か?花沢は、誰もが憧れるモテ男でお前にとってただの友達か?それとも、お前を連れ出してくれるヒーローか」

 佐倉はとまどっていた。

「先生……私、わからないんです。花沢くんはずっと一緒にいていつも眩しいなって尊敬していました。近づいたと思ったら一回遠くなっちゃって、で、今、また私の心揺らすようなこと言ってくれて、、で本原先生は、一緒にいて安心するんです、追いかけたい、そばにいたいって思います。でも、今はちょっと色々あって」

「……佐倉、俺はあいつの親友だ。あいつの孤独も、あいつがお前に向けてる真剣さもわかる」

 俺は一歩踏み込み、彼女の目を見据えた。

「あいつは今もまだあの人の影を追っている。そんな状況に、お前に、その覚悟はあるか?」

「……先生」

 言葉に詰まり、今にも泣き出しそうな顔で立ち尽くす佐倉を見て、俺は小さく溜め息をついた。

 これ以上は、こいつのキャパを超えちまう。俺の勝手な想いを、この小さな肩に背負わせるわけにはいかない。

 俺はわざとらしく頭を掻き、いつもの軽い調子で笑ってみせた。

「……ま、深刻な顔すんなって。俺はただ、お前を含めて、みんなが幸せになれる方法があったらいいなって思ってるだけだ。別に、今すぐ答えを出せってお前を責めてるわけじゃねえよ」

 一瞬で張り詰めていた空気が緩む。香苗が「あ……」と拍子抜けしたように瞬きをした。

「……ったく。本原に花沢、ついでになんだったか?花沢が言ってたやつ、忘れたが、そいつまで手玉に取って。モテる女ってのは大変だな? 青春謳歌しすぎだろ、お前」

「ちょ、ちょっと、先生! 手玉に取ってるなんて人聞きの悪いこと言わないでください!」

 頬を膨らませて抗議する香苗。その姿に、ようやくいつもの彼女らしさが戻ったのを確認して、俺はひらひらと手を振って背を向けた。

「じゃあな。昼休み終わるぞ。……ちゃんと飯食えよ」

 階段を降りる俺の足取りは、自分でも驚くほど重かった。俺は本原のために祈り、花沢のために願う。その「みんなが幸せになる方法」なんて、本当はこの世のどこにもないのかもしれない。

 誰かが選ばれれば、誰かが必ず泣く。それが恋で、それが人生だ。俺は教師として少しでもみんなが納得した道へといってほしい。

「疲れたなー、帰ったらビール飲むか」

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