表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/69

第47章   先生なんて

 3年生になって初めてのテスト結果の返却日。震える手で受け取った成績表には、学年13位という、今までに見たこともない数字が並んでいた。

「……やった」

 真っ先に浮かんだのは、先生の顔。頑張ったね、と。あの低い声で褒めてほしくて、私は足早に職員室へ向かった。けれど、廊下の角を曲がった瞬間、私の足は凍りついた。

「先生見て! 言われた通りにやったから、今回10位だったよ!」

 先生のデスクの傍で、一人の女の子が弾むような声で笑っていた。少し短めに詰めたスカート、サラサラの髪。そして、私よりも上の「10位」という数字。

 先生はいつもの穏やかな顔で、「そうか、よく頑張ったな」と彼女の頭に手を置こうとして――。

(……見たくない)

 私は咄嗟に壁の影に隠れた。先生にとって、私は数多くいる「頑張っている生徒」の一人に過ぎないんじゃないか。

「先生にとって私は特別じゃないんですかー?」

 なんて口をとんがらせて言ってみる。けど本人に言いたくても言えなくて。視界がじわじわと滲んで、13位という数字が涙で歪む。情けなくて、惨めで、逃げ出したい。

「……何、泣きそうな顔してんだよ」

 不意に上から降ってきた声に心臓が跳ねた。見上げると、そこには花沢くんが立っていた。

「……っ、別に。なんでもない」

「なんでもないわけないだろ。……今、思いっきり目逸らしたな」

 花沢くんは呆れたように息を吐くと、私の隣に並んで壁にもたれかかった。

「話、聞くよ。……どうせアイツのことだろ」

 その真っ直ぐな優しさに、張り詰めていた糸が切れそうになった。花沢くんにだけは、今の無様な自分を見られたくなかったのに。

 私が口を開こうとした、その時。

「花沢ー! お前、今日のバスケ部のきてくれるんだろ」

 遠くから部活の仲間の声が響いた。花沢くんは「あ、忘れてた」と苦笑いして、私の頭を一瞬だけ、乱暴に、でも優しく撫でた。

「……続きは今度。逃げんなよ」

 そう言い残して、彼は走っていってしまった。一人残された廊下。職員室からは、まだ先生とあの女の子の楽しそうな声が聞こえてくる。

「先生のバカ」

 静かにそう言い残し、帰路に着く途中にスカートのポケットに入れていたネックレスが落ちてしまった。それに気づかずにそのまま歩いていってしまうのだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ