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第41章   先生にとって私は

 しばらく先生と話しているとふと一つの疑問が頭に浮かんだ。先生と至近距離で、私は喉の奥からせり上がる苦しさを言葉にした。

「……先生」

「ん?」

 先生はどこか遠い目をして私を見下ろしている。その瞳の奥には、私には見せない、もっと暗い淵があるような気がして。

「そう言えばさっきの女の人おいてよかったんですか」

「別においてねーよ、それにちゃんと言っといたから大丈夫だ」

「そう、なんですね、あのよく女の人といるんですか」

 先生の動きが一瞬だけ止まった。彼は意地悪く笑うことも、否定することもしない。ただ、ゆっくりと私から体を離すと、テーブルの上のタバコに火をつけた。煙が部屋の空気を濁らせる。

「……まあよく直哉の付き合いで色々行かせられてることが多いかな。それに、俺は女からの誘いは断りたくねーんだよな、なるべく」

 本当に女性から人気なのだろう。こんなにかっこよくて優しくて男気があって、安心感もあって素敵な男性なのだから

「……私は、先生にとってなんですか?」

 震える声で尋ねると、先生は煙を吐き出しながら、冷ややかな視線を私に向けた。その瞳は、さっきまでの甘い熱をすっかり失い、教師という仮面を被った男のそれになっていた。

「…… お前が聞きたい答えは、俺が教えてやる通りになるのか?」

 彼は私の顎を指先でクイと持ち上げ、逃げ場を奪うように見下ろした。

「……先生は私をだ、抱けますか?」

 我ながらやばいことを聞いている自覚はある。だけど、先生が私を1人の女として、まだ何もわからない子供じゃなくて女性として見ているか確認したかった。

「な、お前、なんてこと聞いてるんだ。お前は俺が好きなのか」

 先生はとても慌てふためいて動揺した。私からこんな言葉が出てくるだなんて予想だにしなかったんだろう

「…」

 いざ言葉にしようとするとなんとも言えない恥ずかしさがある。けれど否定はできなくて静かに頷いた。

「花沢のことはいいのか」

「!?先生なんで知ってるんですか」

「見てたらわかるよそりゃあな、あいつ基本女に冷たいのにお前にだけ優しいし、それになんだかな」

 そう言いかけて先生はやめてしまった。確かに彼への答えをまだ出していないのに先生に思いを伝えるのは違う気がする。

「彼のことはそのなんていうか、っ!?」

 先生の方を見ると急に彼は私の髪を乱暴に撫で上げ、今度こそ逃げ場を塞ぐようにベッドの上に私の身体をやり、そして深く、重いキスを落とす。先生の唇が今間違いなく私に触れている。もう、何も考えられない。花沢くんの優しい言葉も、卒業という期限も、罪悪感も。先生の放つこの圧倒的な色気に飲み込まれて、ただこの溺れるような感覚に身を委ねるしかない。


 

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