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第35章   楽しい4人の街歩き

 東京駅のホーム。修学旅行の特別感が、朝の冷たい空気さえも賑やかなお祭りに変えていた。新幹線に乗り込み、ゆかりたちと同じ班で席を囲む。

「京都とかマジ楽しみー! 食べまくるぞ!」

 ゆかりの声に、花沢と田中の笑い声が重なる。新幹線が走り出すと、車内はあっという間に談笑の渦になった。窓の外を流れる景色が少しずつ山深くなっていくのを眺めながら、香苗は友達の輪の中で笑っていた。

 京都に着くと、空気は一変した。歴史の重みを感じさせる街並み。早速、ガイドブックで調べていた有名店のみたらし団子屋へ向かう。焦げた醤油の香ばしさに顔を見合わせて笑い、ゆかりの念願のフォトスポットへ行くと、二人で並んで何度もスマホのシャッターを切った。

「あ、今の写真めっちゃ良くない!? 早速インスタにあげよ〜。……てか、これ彼氏に送ろっと」

 ゆかりが何気なくそう言った瞬間、それまで笑い合っていた班の空気が、一瞬だけピタッと止まった。

「え!! 彼氏いるの?」

 田中が素っ頓狂な声を上げて、手に持っていたお団子の串を落としそうになる。その顔には「マジかよ」という驚きと、隠しきれないショックの色が浮かんでいた。

「え、いや……待てよ。おま、彼氏いたんか……」

 田中くんはガックリと肩を落とし、大げさに天を仰いだ。

「ははは! 田中くん、どんまい!」

 ゆかりは田中くんの反応を見てケラケラと笑い飛ばす。そうして、ゆかりはまた香苗と撮り始めた。

「あー、最高! 今日の香苗も可愛いよ!」

 ゆかりに言われて照れ笑いをする香苗の横で、田中がニカっと笑って花沢くんの肩を叩いた。

「いやー、楽しいなほんと花沢!」

「ああ」

「そういやこの前の試合も大活躍のおまえは、大学でもやっぱバスケするんだよな?」

「ん、まあそうするかな、お前は?」

「俺は続けるよ、てか大学もバスケの強さで選んでいくしなあ」

 田中も花沢くんもそれぞれちゃんとやりたいことがあって素敵だなぁと考えているとゆかりが急にこんなことを言い出した。

「なんか花沢くん、前より柔らかくなったよね。昔はもっと、こう……キリッとしてて近寄りがたい感じだったのに」

「うわ、わかるわー、前はせっかく告白してくれる女子にもひっでー態度だったのに最近断り方優しいもんなお前」

「そうか?」

 花沢くんは少し照れくさそうに笑って、隣にいた香苗に視線を向けた。その眼差しは驚くほど穏やかで、香苗は不意にドキリとした。

「あ、そろそろ宿に向かわないと!」

 なんだか反応に困って誤魔化してしまった。そのあと色々回りたいとこを巡っていたら時計の針が5時を回っていた。6時から夕飯なので忙がないといけない。香苗はふと花沢くんのあの話は結局なんななのだろうかと考えつつ急いで宿へと向かった。

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