第3章 幼馴染
「……ん、なんか鳴ってる?」
枕元で鳴り続けるスマホを、手探りで掴む。画面には『さやか』の文字。寝ぼけた頭で応答ボタンを押せば、スピーカー越しに快活な声が飛び込んできた。
「ねえねえ、報告したいことがあるんだけど、今日会えたりしない?」
久しぶりに何もない休日だったのに。私は欠伸を噛み殺しながら時計を確認する。
「……んー、11時過ぎならいいけど」
「え!まだ寝てたの? もう、仕方ないなあ。じゃあ11時ね!」
一方的に通話を切られ、私は天井を仰いだ。さやかからの急な呼び出し、しかも「報告」なんて言葉を聞けば、嫌でも勘繰ってしまう。あの子のことだ、きっと誰かから、というかあの人に告白でもされたに違いない。
うわあ、聞きたいようで聞きたくない。私は慌ててベッドから飛び起きた――のだが。
(ゴンッ!)
「っいったぁ……!」
小指をタンスの角に強打する。朝からこの仕打ちはないでしょう。私は涙目になりながら、階下に向かって声を張った。
「お母さん、ちょっと出かけてくる!」
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「おまたせ、さやかー」
「ありがとね、急に。とりあえずいつもんとこでいいかな。」
そうしてわたし達はいつものところへ向かう。ずっと小学校の頃から通い続けているカフェへと。色んなところを巡っても結局はここに来てしまうのだ。
「うわー、お小遣いピンチだけどパンケーキ食べたいかも、さやかは」
「急に呼び出しちゃって悪いし、私が奢るわ。」
「え、いいの!あんたいい女だよ。」
さやかは、地元ではかなり有名な資産家のお嬢様だ。とても上品でお淑やかである。でも、結構割ときついこと言ったりして、面白かったりする。
「で、報告というのはもしかして、、」
「うん、その山下くんとお付き合いすることになりました。」
「もうやっとかよ、あいつ!にしてもほんとおめでとう!まああの男なら安心してさやかを任せられるってもんだよ。」
「ふふ、かなってばお母さんみたいに。」
なんて幸せそうなんだ。そうそう、この2人みたいな恋愛がしたいんですよ私。山下は花沢と親友であいつほどではないがとても頭がよく運動神経もいい。そして、何より優しい、花沢と違って告白されても無下にしたりはしない。まあみんな山下のさやかへの想いが態度からダダ漏れで告白する人あんましいなかったけど。
「あっそうそう、山下くんと話してたんだけど今度花沢くんと4人で遊ばない?」
「え、いやーいいけどさ、うち別に花沢くんと付き合ってないし、おかしくない?」
「…ずっと気になってたんけどさ、香苗って花沢くんのことこれっぽっちも気になってないの?」
「え、そりゃ良い奴だとは思うけど恋愛対象としては見てないかなあ。どしたの急に。」
「だって、ううん、なんでもない。(無自覚だと思うけど絶対花沢くんってかなのこと気にしてると思うんだけどなあ)」
「何さもう、まあほんとさやかが山下くんと結ばれて嬉しいよ、いっぱい楽しんでくださいな。」
正直さやかのこと取られて少し寂しいけど、さやかが幸せになれるんならがまんしないとだよね、ほんと幸せになってよね。




