第29章 この日々をいつまでも
文化祭が終わり、そして大きな試験もとりあえず終わった。偶然試験の後の終わりの日が被っていたため4人で遊園地に行くことになった。
絶叫マシーンで悲鳴を上げて笑い転げ、メリーゴーランドの前で四人で写真を撮り合った。
「次、あれ乗ろうよ!」「えー、もう一回あっちのコースターがいい!」
さやかの明るい声が響き、香苗と花沢くんも試験の重圧から解放されて楽しんだ。食べ歩きをしたり、絶叫系に乗ったりと、
日が暮れかけ、最後は観覧車に乗ることになった。4人ということもあり、みんなで1つのゴンドラに乗り合わせるかと思ったが、山下がさやかと2人で乗りたいというので、山下とさやか、花沢と香苗の2人ずつなることになった。上昇するにつれ、園内のイルミネーションが宝石箱のように広がっていく。
「……綺麗だな」
花沢くんが窓の外を見ながら、小さく呟いた。ふと、彼は香苗の方を見て、照れくさそうに笑う。
「そうだね、あっ」
ふと上を見るとさやかと山下くんがキスをしているところを見てしまった。2人は恋人なのだからして当たり前なのになんだか照れ臭いような感じがする。
「どうした?佐倉顔赤いけど」
「ううん、なんでも、はは」
「なあ、……もしさ、この先バラバラになっても。大学生になっても、こうやって四人で遊園地に来る時間が続いたら、それってすごく嬉しいよな」
その言葉は、まるで未来への約束のように聞こえた。香苗の心の中の不安が、溶けていく。彼は今、私の隣にいて、「これからも」と言ってくれている。
「……うん、嬉しい。すごく、幸せ」
香苗は花沢くんの横顔を見て、胸がいっぱいになった。窓の外に広がる光よりも、今隣にいる彼とのこの時間が、何よりも大切で、温かかった。
帰り道。四人は駅で解散した。
花沢くんは香苗の荷物が自分のとこに間違って入っていることに気づきます慌てて追いかける。
「佐倉、これ!」と声をかけようとして、角を曲がった先で、花沢くんは足を止めた。
駅前の街灯の下。そこには、香苗と、見慣れたスーツ姿ではない、私服の本原先生が立っていた。
「……あ、先生?」
花沢くんの声は、喧騒にかき消されて届かない。
二人は何気ない様子で話している。先生が冗談を言い、香苗がクスクスと笑いながら先生を見上げている。
先ほどまで、自分と二人きりでいた時と同じような、あるいはそれ以上に香苗の表情が弾んでいる。
花沢くんは、ポーチを握りしめたまま、その光景を呆然と眺めていた。
(……本原先生と、あいつってあんなに仲が良かったのか?)嫉妬というよりも、純粋な疑問が胸に浮かぶ。
先生と生徒。指導者と教え子。自分が知っている二人の距離感とは違う、もっと親密で、もっと深い何か。
先生が香苗の髪を軽く直すと、香苗は驚いたように顔を赤くして、恥ずかしそうに俯いた。その仕草のあまりの女性らしさに、花沢くんは息を呑む。
「先生今日は何してたんですか?」
「まあ飲みっつーか、まあそんなとこだな」
「そうなんですね、、(なんかすごく香水の匂いがするような、女性もいたのかな)」
「どうした、怪訝そうな顔して、」
「い、いえ、さようなら」
急に慌てて先生から離れていく香苗を見て花沢くんは不思議に思いながらもその後帰路に着いたのだった。




