↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙人が地球に来た理由が、ラーメンを食べるためだった  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/13

第六話 つけ麺を出したら、麺とスープが別々の宇宙船で運ばれた

午前十一時。

『らーめん銀次』の厨房で、佐藤健太は茹で上げた太麺を冷水で締めていた。

「今日はつけ麺だ」

美咲が隣の小丼をのぞき込む。

「魚介豚骨のつけ汁、いい匂いですね」

「麺は冷たく、汁は熱く。食べる直前につけるからうまいんだ」

そこへ六本腕のガルが飛び込んできた。

「店主! 皇帝陛下がご来店です!」

「またかよ」

「本日は銀河麺類禁止連邦の最高指導者ゼルガード閣下もご一緒です!」

「仲いいな、あの二人」

「なお、護衛艦隊は三万隻です!」

「減らせって言っとけ!」

数分後。

皇帝とゼルガードがカウンターに並んで座っていた。

二人は今日も八席しかないカウンターに並んで座った。

皇帝は上機嫌だった。

「健太よ。今日は新たな麺料理があると聞いたぞ」

皇帝が目を輝かせる。

「ああ。つけ麺です」

ゼルガードが首をかしげる。

「つけ麺?」

「麺をスープにつけて食べる料理ですよ」

「……つける?」

健太は麺の皿とつけ汁の丼を並べた。

皇帝が固まった。

「…………」

ゼルガードも固まった。

「…………」

「どうしました?」

皇帝が震える声で尋ねた。

「健太よ」

「はい」

「……スープと麺が、離れているぞ」

ゼルガードが真顔で尋ねる。

「麺がスープから独立したのか?」

健太は答える

「違います。つけて食べるんですよ」

健太は箸で麺を取り、熱いつけ汁に半分ほど浸した。

ズズッ。

「こうです」

皇帝がまねをした。

「……おお! 冷たい麺に、濃い汁が絡む!」

ゼルガードもすすった。

「噛み応えがある。汁の香りも強い!」

「別々だからこその味です」

二人は夢中で食べ、最後に残ったつけ汁を見つめた。

「これは飲み干してよいのか?」

「そのままだと濃いでしょう。出汁で割ります」

健太が温かい出汁を注ぐと、皇帝は目を丸くした。

「離れていたものが出会い、さらに新しい味になるのか」

ゼルガードが小さく笑った。

「我々の関係に似ているな」

「元敵同士が、今じゃ隣で麺をすすってますからね」

ゼルガードが感動したようにつぶやく。

「一度離れた者たちが、再び出会う……」

「素晴らしい!」


二人は夢中で食べ始めた。

しかし、しばらくすると皇帝が首をかしげた。

「健太よ」

「何です?」

「スープが残った」

「はい」

「これはどうすればよい?」

「ああ、スープ割りですね」

「……スープ割り?」

健太は小さなポットを持ってきた。

中身は温かい出汁だった。

「濃いつけ汁を出汁で割って、飲みやすくするんです」

皇帝の目が見開かれた。

「……待て」

「はい?」

「スープに、さらにスープを加えるのか?」

「まあ、そうですね」

皇帝が立ち上がった。

「二つのスープが合体するだと!?」

ゼルガードも立ち上がる。

「第三勢力の介入か!」

「もう黙って飲んでください!」

健太は二人のつけ汁に出汁を注いだ。

皇帝が一口飲む。

「…………」

ゼルガードも飲む。

「…………」

皇帝が静かにつぶやいた。

「……うまい」

ゼルガードが深くうなずく。

「最後まで計算されているのか」

健太は笑った。

「料理って、そういうもんですよ」

皇帝は空になった丼を見つめた。

「麺とスープは、離れていても一つの料理だったのだな」

「そういうことです」

ゼルガードが腕を組んだ。

「つまり、離れているからといって敵とは限らない」

「まあ、そうですね」

二人は顔を見合わせた。

皇帝が言った。

「我々も、かつては敵同士だった」

ゼルガードが答える。

「今は同じカウンターで麺を食べている」

二人は静かに笑った。

美咲が小声で言った。

「……ちょっといい話ですね」

健太もうなずいた。

「ああ。珍しくな」


その日の夕方。

銀河帝国から正式な外交文書が届いた。

『銀河帝国と銀河麺類禁止連邦は、つけ麺協定を締結する』

『双方は独立を尊重しつつ、必要に応じて交流する』


翌朝。

店の前に巨大な看板が設置されていた。

『銀河平和記念つけ麺店』

健太は絶叫した。

「勝手に店名を変えるなああああ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。