徐福
7/16 本日投稿分です。
徐福は物部屋敷の一室にしつらえた祭壇の前に座し、静かに瞑目していた。
「む、何だ?」
脳内にかすかな違和感が生じている。
その正体を探ろうと、神経を集中させる。
徐福には、その感覚に覚えがあった。
「これは、わしが式神との間に繋げた霊脈か。何者かがそれを使っているとみえる」
その霊脈を意識することで、違和感の正体が次第に明らかになってくる。
すると、途切れ途切れの映像が脳内で再生されるのがわかった。
これは?
宇陀野の洞穴か。
中を進むのは二体の鬼と人間、おお、あれは厩戸ではないか。
次の瞬間、映像が切り替わる。
洞穴の奥で薄青色の光を湛え、静かに脈動している物質の映像。
これは、アムリタ!
厩戸一行とアムリタの映像が、徐福の脳内で幾度も切り替わる。
徐福は眉を顰めた。
「これは、アムリタがわしに知らせている?」
アムリタには防衛本能が備わっていることを徐福も知っている。
最初に宇陀野洞穴に送り込んだ物部の家中の者どもも、洞穴内で旧鼠の群れに襲われた。
旧鼠はアムリタが自己防衛のために変異させた怪異だ。
「アムリタめ。わしに厩戸たちを阻止せよというのか」
おそらくそれがアムリタの狙いであろうと見当をつける。
「わしと厩戸を争わせ、漁夫の利を得ようとでもいうのだろうが」
徐福は不敵な笑みを浮かべた。
「果たしてそううまくいくかな」
「だが、牛頭馬頭を召喚するにも準備が必要なのだ。どこにでも召喚できるというわけではないからな」
すると、まるでその声を聞いていたかのように脳内の映像が切り替わる。
見ると、アスラによって破壊された式神の破片が洞窟内に置かれている。
「ほう、そこへ召喚せよというのか。至れり尽くせりだな」
徐福が苦笑いする。
「だが、見ておれ、厩戸どもを倒した後に、必ずお前を手に入れて見せよう」
徐福は目を閉じ、印を結ぶ。
「無間招闇、業鬼来顕!」
式神の破片が置かれた洞穴に雷鳴が轟く。
次第に空間が歪み始め、周囲の瘴気を巻き込みながら渦を形成する。
その渦の向こうから二体の鬼が現出した
禍々しいばかりの深紅の鎧を身に纏った武者姿の鬼、牛頭。手にした巨大な矛を轟と振り、激しい咆哮で大気を震わせた。
さらに、漆黒の甲冑に包まれたもう一体の鬼、馬頭。手には冷たく輝く青龍刀を携え、油断なく洞穴内を睥睨している。
周囲を確認した馬頭が鼻を鳴らす。
「ふん、また同じ洞穴のようだな」
牛頭は瘴気を吸い込み、不敵に笑う。
「ああ、懐かしい臭いがするわい」
「しかし、何事だ?同じ場所に召喚するとは、徐福は何を考えている?」
そんな馬頭の疑問を牛頭は豪快に笑い飛ばす。
「理由などどうでも良いわ。満足できる闘いができれば、それで良いのだ」
「まったく、貴様という奴は」
馬頭は呆れて首を振る。
その時だった。
通路の奥から足音が響き、近づいてくる三つの気配。
牛頭は鼻先をひくつかせると、口元を大きくゆがめた。
「覚えているぞ、この匂い」
馬頭も薄く笑う。
「ほう、これは先日の人間どもではないか」
牛頭と馬頭、二体の鬼が待ち受ける場に、厩戸たちが姿を現した。
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