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飛鳥異聞~日出処の天子と六道の覇王アスラ  作者: ダンケ
第1章:飛鳥擾乱

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99/119

徐福

7/16 本日投稿分です。

 徐福は物部屋敷の一室にしつらえた祭壇の前に座し、静かに瞑目していた。

「む、何だ?」

 脳内にかすかな違和感が生じている。

 その正体を探ろうと、神経を集中させる。

 徐福には、その感覚に覚えがあった。

「これは、わしが式神との間に繋げた霊脈か。何者かがそれを使っているとみえる」

 その霊脈を意識することで、違和感の正体が次第に明らかになってくる。

 すると、途切れ途切れの映像が脳内で再生されるのがわかった。


 これは?

 宇陀野の洞穴か。

 中を進むのは二体の鬼と人間、おお、あれは厩戸ではないか。


 次の瞬間、映像が切り替わる。

 洞穴の奥で薄青色の光を湛え、静かに脈動している物質の映像。

 これは、アムリタ!


 厩戸一行とアムリタの映像が、徐福の脳内で幾度も切り替わる。


 徐福は眉を顰めた。

「これは、アムリタがわしに知らせている?」

 アムリタには防衛本能が備わっていることを徐福も知っている。

 最初に宇陀野洞穴に送り込んだ物部の家中の者どもも、洞穴内で旧鼠の群れに襲われた。

 旧鼠はアムリタが自己防衛のために変異させた怪異だ。


「アムリタめ。わしに厩戸たちを阻止せよというのか」

 おそらくそれがアムリタの狙いであろうと見当をつける。

「わしと厩戸を争わせ、漁夫の利を得ようとでもいうのだろうが」

 徐福は不敵な笑みを浮かべた。

「果たしてそううまくいくかな」


「だが、牛頭馬頭を召喚するにも準備が必要なのだ。どこにでも召喚できるというわけではないからな」

 すると、まるでその声を聞いていたかのように脳内の映像が切り替わる。

 見ると、アスラによって破壊された式神の破片が洞窟内に置かれている。


「ほう、そこへ召喚せよというのか。至れり尽くせりだな」

 徐福が苦笑いする。

「だが、見ておれ、厩戸どもを倒した後に、必ずお前を手に入れて見せよう」


 徐福は目を閉じ、印を結ぶ。

「無間招闇、業鬼来顕!」


 式神の破片が置かれた洞穴に雷鳴が轟く。

 次第に空間が歪み始め、周囲の瘴気を巻き込みながら渦を形成する。

 その渦の向こうから二体の鬼が現出した


 禍々しいばかりの深紅の鎧を身に纏った武者姿の鬼、牛頭。手にした巨大な矛を轟と振り、激しい咆哮で大気を震わせた。

 さらに、漆黒の甲冑に包まれたもう一体の鬼、馬頭。手には冷たく輝く青龍刀を携え、油断なく洞穴内を睥睨している。


 周囲を確認した馬頭が鼻を鳴らす。

「ふん、また同じ洞穴のようだな」

 牛頭は瘴気を吸い込み、不敵に笑う。

「ああ、懐かしい臭いがするわい」


「しかし、何事だ?同じ場所に召喚するとは、徐福は何を考えている?」

 そんな馬頭の疑問を牛頭は豪快に笑い飛ばす。

「理由などどうでも良いわ。満足できる闘いができれば、それで良いのだ」

「まったく、貴様という奴は」

 馬頭は呆れて首を振る。


 その時だった。

 通路の奥から足音が響き、近づいてくる三つの気配。

 

 牛頭は鼻先をひくつかせると、口元を大きくゆがめた。

「覚えているぞ、この匂い」

 馬頭も薄く笑う。

「ほう、これは先日の人間どもではないか」


 牛頭と馬頭、二体の鬼が待ち受ける場に、厩戸たちが姿を現した。


お読みいただきありがとうございます。

評価(星)、いいね、レビュー、感想などぜひお願いします。

明日も1話投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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