宇陀野洞穴の善徳
7/14 本日投稿分です。
善徳たちは、宇陀野洞穴を奥へと進んでいく。
ここまでに旧鼠と数度の戦闘を経ていたが、特に問題なく怪我人もいない。
先頭を行くのは刀自古だ。
頭には、家鳴りがちょこんと乗っている。
「きゅい!」
一声鳴いた家鳴りが左の咆哮を指差している。
「みんな、来るよ!」
「おお!」
善徳と刀自古が前に出る。
嶋は家鳴りと共に後方で待機する。
現れたのは、またしても旧鼠の群れだ。
善徳が天断を一閃すると、先頭の数十匹が吹き飛んだ。
「やあっ」
刀自古が一気に跳躍し、群れの中央に躍り込む。
正拳、裏拳、肘打ち、回し蹴り、舞うように旧鼠を打ち倒していく。
嶋が見惚れるほどの連携をみせ、わずかな時間で旧鼠を殲滅した。
「あら、善徳さま」
嶋が善徳の頬に手を触れる。
「な、なにを」
動揺する善徳に嶋は柔らかな笑みを浮かべた。
「生命の聖霊よ、慈しみの光を」
嶋の手から淡い緑の光が発せられ、善徳の頬の傷を癒していく。
「善徳さま、油断は大敵ですよ」
「お、おう。知らぬうちに傷をつけられていたか。し、嶋どの、かたじけない」
「あら、善徳さま。私のことは嶋とお呼びくださいと申したはずですが」
「あ、ああ、そうであったな。し、嶋、ありがとう」
「あれー、兄さま、なんか顔が赤いよ?」
覗き込む刀自古から顔を背ける善徳を見て、嶋は楽しそうに笑みをこぼした。
「それにしても、家鳴りの索敵能力はたいしたものだな」
嶋のもとを離れ、定位置の刀自古の頭に乗った家鳴りが、きゅい、と鳴く。
「えっへん」となぜか刀自古も胸を張る。
「確かにそれは言えてますわ。ここまで無傷で来れたのも、家鳴りさんの索敵の力が大きかったと思います」
嶋も善徳の言葉に同意する。
「これからもよろしくお願いね、家鳴りちゃん!」
「きゅい」
刀自古の言葉に応えるように胸を張る家鳴りであった。
「ここは牛頭馬頭たちと闘った場所だな」
牛頭馬頭の放った風刃の生々しい傷跡や、アスラの火炎で焼け焦げた岩肌、激戦の跡が残されている。
「ここで兄さまは矢で倒れたんだよ」
「うむ、ここから先は未知の領域だ。新たな怪異が出るやもしれん。気を抜くなよ」
さらに進むと洞穴の内部の瘴気が次第に濃くなっていく。
岩肌には黒ずんだ筋が血管のように浮かび上がり、脈打っているように見える。
「ん?兄さま、あれを見て」
刀自古の指さす先には、蜂の巣のようにひび割れた地面や崩れた壁、焼け爛れた岩肌が露出している。
「これは、戦闘の後だな」
「戦闘?」
「ああ、それも相当激しい戦いがあったようだ」
岩肌に触ってみれば、まだ熱が残されていた。
「これってやっぱり厩戸さまたちが?」
善徳が頷く。
「よし、急ごう。厩戸どのと合流するぞ」
刀自古と嶋は頷き、刀自古の頭上の家鳴りもきゅいと鳴く。
善徳たちは厩戸との合流を目指し、さらに足を速めるのであった。
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明日も1話投稿予定です。




