夜叉王の最期
7/13 本日投稿分です。
厩戸たちの死闘は続いている。
夜叉王の巨棒が厩戸の炎を打ち払い、龍燈鬼の金棒を弾き返す。天燈鬼の結界は幾度となく砕かれ、そのたびに張りなおされる。
傷を負わせても夜叉王はすぐに傷口を再生し、回復する。
「くそっ、きりがないぞ」
歯噛みする天燈鬼。
だが、厩戸は激闘の中で、ある違和感を覚えていた。
龍燈鬼の金棒が夜叉王の胸を抉る。
だが、その傷はすぐに修復される。
その瞬間、金色の光が走るのだ。
洞窟の奥から一筋の光が伸び、それが夜叉王に届くたび、傷は再生されていく。
厩戸は攻撃を躱し火炎呪を唱えながら、その現象を観察する。
斬る。
再生する。
焼く。
回復する。
そのたびに金色の光が走る。
「そうか!」
厩戸の目に確信の光が灯る。
それに気付いた天燈鬼が結界越しに叫ぶ。
「どうした!何かわかったか!」
「うむ。アムリタだ」
「アムリタ?」
「夜叉王は自力で回復しているのではない。傷を負うたびに洞穴の奥のアムリタが再生しているのだ」
龍燈鬼が目を見開く。
「夜叉王とアムリタを結ぶ光の流れを断つ。夜叉王が再生する瞬間だけ、アムリタからの流れが見える。それを断つ」
厩戸は二体の鬼と頷きを交わす。
「われが火炎呪で傷を負わせた瞬間に、天燈鬼は結界で奴の動きを封じよ。必ずアムリタから再生の光が夜叉王に向かうはず。それをわれが結界術で阻止する。そこを龍燈鬼」
厩戸の視線を受けて龍燈鬼が金棒を振り上げる。
「これで夜叉王を打ち倒すのだな」
厩戸が笑顔で頷いた。
グオオオオ!
夜叉王の咆哮が洞穴内に響き渡る。
「いくぞ!」
厩戸が印を結び火炎呪を唱える。
「オン・アグニャ・シャバダ・ウン!」
炎の龍が夜叉王に襲いかかり、漆黒の肌を焼く。
「今だ!」
「応!」
天燈鬼が結果術で夜叉王の動きを封じた。
その間隙をついて厩戸が夜叉王の背後に回り込む。
「来た!」
洞穴の奥から一条の光が伸びてくる。
「絶界!」
厩戸の両手に結界の淡い光が浮かび上がる。
霊的な繋がりを断つ、盾の形状の結界だ。
光の盾を構えた厩戸が、アムリタから伸びる光を受け止める。
「うおおおお!」
光の圧力で押されながら、全身の力を振り絞って耐え抜く。
「行け!」
「応!」
龍燈鬼の巨大な金棒が唸りを上げる。
天燈鬼の結界により夜叉王は身動きできない。
ドゴン!
渾身の一撃が夜叉王の肩を砕き、その巨体を地面に叩き伏せた。
顔をあげ、縋るように洞穴の奥を振り返る夜叉王。
だが、アムリタの光は届かない。
厩戸の結界術が見事に光の道を断ち切っている。
グオオオオ!
断末魔の叫びも次第に力を失っていく。
やがて夜叉王の巨体は無数の光の粒となって崩れていった。
厩戸がゆっくりと息を吐き、結界を解いた。
だが、これですべてが終わったわけではない。
厩戸たちは、アムリタを求めて洞穴のさらに奥へと歩みを進めていく。
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