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飛鳥異聞~日出処の天子と六道の覇王アスラ  作者: ダンケ
第1章:飛鳥擾乱

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95/119

厩戸の想い

7/12 本日投稿分です。

 宇陀野洞穴の奥では、厩戸一行と夜叉王が対峙している。


 夜叉王は深紅の眼で厩戸を睨みながら、右の巨腕を掲げると、周囲の瘴気が集まり始める。

「な、なんだ?」

 瘴気は急速に凝り固まり、巨大な棒と化した。その棒を夜叉王が横なぎに一閃する。

「うおっ」

 その風圧だけで空気そのものが裂け、暴風となって厩戸たちを襲う。

「なんという馬鹿力だ」


 天燈鬼が一歩前に出る。

 そこへ夜叉王が巨棒を振り下ろす。

 その踏み込みによる轟音と共に大地が爆ぜ、岩盤が砕け散る。

「絶界壁!」

 両手を広げた天燈鬼を半球状の結界が包み込む。

 凄まじい衝撃が結界を揺るがし、結界に亀裂が走る。

 崩壊するかという瀬戸際で、なんとか耐えきった。

 天燈鬼の額に汗が浮かぶ。


 そこへ龍燈鬼が巨体を揺らしながら飛び込んでいく。

 肩に担いだ金棒を振りぬいた。

 それを夜叉王は真正面から受け止める。

 金棒と巨棒がぶつかり合い、拮抗する力で地面は蜘蛛の巣状にひび割れた。

 龍燈鬼は全身の筋肉を膨れ上がらせて、さらに押し込もうとする。

 夜叉王も低くうなりながら押し返す。


「厩戸!」

 天燈鬼の叫びに頷く厩戸。

「オン・アグニャ・シャバダ・ウン!」

 黄龍。

 炎が龍と化して夜叉王に襲いかかる。

 轟!

 巨大な炎の龍が夜叉王を飲み込み、洞穴を白く染め上げた。熱風が吹き荒れ、周囲の岩壁が焼け爛れる。


「やったか!」

 だが、炎の中の巨影が腕をひと振りすると、炎が左右に吹き飛んだ。

 夜叉王は全身から黒い瘴気を噴き上げながら、咆哮をあげる。

 すると夜叉王の焼け焦げた傷跡が、みるみるうちに塞がっていく。

「これは!傷口を再生しているのか!」

 厩戸が息を呑む。


 夜叉王は龍燈鬼へ向かって踏み込み、巨棒を振り下ろす。

 龍燈鬼は金棒で受けるが、衝撃で吹き飛ばされ、岩壁に激突した。

 間髪を入れず、夜叉王は天燈鬼に向けて巨棒を叩きこむ。

 咄嗟に防御の結界を張る天燈鬼。

 受け止めたかに見えたその瞬間、結界は砕け散り、天燈鬼が地に転がる。


「これは!」

 夜叉王の力がさらに増している。

 厩戸は思わず懐の横笛に手を触れる。

 横笛を吹いたなら、アスラがこの場に現れるだろう。

 アスラならば、再び夜叉王を打ち倒すことができるに違いない。


 だが、厩戸は思いとどまる。

 この後に必ずアスラの力が必要な時が来る。

 ここは自分たちの手で夜叉王を倒さねばならない。


 厩戸はアスラの言葉を思い出す。

「想いの強さが術の威力を左右する」

 ならば、今の自分を突き動かす想いとは何だ。

 それは、なんとしても善徳を救うという想い。

 その想いは、この程度の敵さえ打ち倒せぬほどの軽いものなのか。


「断じて違う!」

 厩戸は印を結び、再び火炎呪を唱える。

 天燈鬼は結界を張り、夜叉王の猛攻を受け止まる。

 龍燈鬼は金棒を振りかざし、夜叉王へ殴り掛かる。


 洞穴には金棒と巨棒の激突する轟音、爆ぜる炎、砕け散る結界の光が絶え間なく交錯し、壮絶な死闘はいつ果てるともなく続いていく。


お読みいただきありがとうございます。

評価(星)、ブックマーク、感想、レビューなどぜひお願いいたします。

明日も1話投稿予定です。

よろしくお願いいたします。


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