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飛鳥異聞~日出処の天子と六道の覇王アスラ  作者: ダンケ
第1章:飛鳥擾乱

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宇陀野へ

7/11 本日投稿分です。

「なんと、では、厩戸どのは既に宇陀野へ向かっているのですね」

 驚いて問う善徳に、そうだ、と頷くアスラ。

 すでに重臣たちは退出し、部屋には善徳たちだけが出立の準備をしていた。

「兄さまを救うために、アムリタを求めて洞穴に向かわれたの」

「ならば、なおさら急がねばなるまい。われのために厩戸どのが命を危険にさらしている。それを知って安穏としていることなどできない。嶋どのの言う通り、今すぐ発とう」

 刀自古と嶋も頷いた。


「まあ待て」

 黙って見つめていたアスラが口を開く。

「その覚悟は見事だ。だが、覚悟だけではアムリタを手にすることはできぬ」

 アスラの言葉に善徳は足を止める。

「おれも暫くは動けぬ。おれが動けば必ず徐福がそれに気付く。それに、おれが本来の力を取り戻すには、時が必要だ」


 厳しい表情の善徳にアスラはわずかに口元を緩める。

「だからといって、行くなとは言わぬさ。だが、無闇に飛び込むようなことはするな。厩戸もそんなことは望んではいまい」


 アスラは善徳の胸元を指差す。

「まずお前だ。お前の思い切りの良さは、確かに長所だ。だがな、全ての敵を一撃で倒すことはできぬ。仲間を信じよ。一人で闘うのではない。刀自古がいる。嶋がいる。そして厩戸もな。仲間と共に闘い、お前の最高の一撃を叩きこむ時を見極めるのだ」

 善徳は拳を握りしめ、しっかりと頷いた。


「次に刀自古」

 ん?と刀自古は顔を上げる。

「洞穴には時に狭い場所がある。剣よりもお前の拳の速さが進化を発揮するだろう」

 うんうんと頷く刀自古。

「だが、決して力任せに突っ込むな。息を整え、拳に集中しろ。一撃必殺を狙うのではなく、確実な連撃を心掛けよ。お前の積んできた修練を信じるのだ。心を無にすれば、最速最適の拳が振るえるはずだ」


「最後に嶋」

「はい」

 嶋が前に出る。

「お前の治癒術は大したものだ。だからこそ、敵にとっては最優先に狙うべき存在となる。決して一人で前に出るな。お前が先に倒れたら全員が崩れる。後方で仲間を支えることこそが、お前の役割なのだ」

 嶋は真剣に耳を傾けている。


「覚えておけ。最も恐ろしいのは焦りだ。焦りで心を乱した者から倒れていく。極限の闘いとはそういうものだ。互いを信じ、自らの最善を尽くせ」


 三人は互いの目を見つめ合い、しっかりと頷き、お互いの覚悟を確認し合う。それを見たアスラもわずかに笑みを浮かべた。


「おお、そうだ、刀自古」

 アスラが懐から何かを取り出し、刀自古に放り投げる。

「ひゃっ」

 慌てて受け取った刀自古。

「え?家鳴り?」

 きゅい、と鳴く一体の家鳴り。丸い眼で刀自古を見上げている。

「と、刀自古ちゃん、なに、その可愛い生き物」

 嶋も驚いている。

「この子は家鳴り。刀自古の友達なんだ。でも、なんで?」


「どうしても連れて行けとうるさいのでな。何かの役に立つかもしれん。連れて行ってやれ」

 刀自古は嬉しそうに家鳴りの頭を撫でた。


「では、行け。決して死ぬなよ」

 善徳は一瞬だけアスラの瞳を見つめる。

 迷いはない。

 何としても厩戸と共にアムリタを持ち帰る。

 腰の神剣天断をひと叩きし、善徳は宇陀野へ向けて歩み始めた。


お読みいただきありがとうございます。

評価、ブックマーク、レビュー、感想などぜひお願いいたします。

明日も1話投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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