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馬頭対厩戸

本日投稿分です。


 厩戸と馬頭は、互いの出方を探り合うように静かに対峙している。天燈鬼、龍燈鬼、二体の鬼もまた厩戸の傍らに控え、馬頭を睨みつけたまま動かない。


「どうした?仕掛けてこないのか?」

 薄笑いを浮かべた馬頭は、腕組みしたまま厩戸たちを挑発する。

「先手は譲ってやると言っているのだ。何もできずに命を落とすのは悔しかろう。まずは貴様の絆の力とやらを見せてみよ」


「オン・アグニャ・シャバダ・ウン」

 火炎呪を唱えた厩戸から紅蓮の炎が一直線に馬頭へと向かっていく。

 直撃するかと見えた瞬間、馬頭の姿が掻き消える。

「危ない!」

 厩戸の眼前に突如現れた馬頭が青龍刀を振り下ろす。それを龍燈鬼の金棒が弾き飛ばした。

「なんという速さだ!」目をむいて驚く天燈鬼。

「だが軽い!」金棒を構えた龍燈鬼が不敵に笑う。


「初手ゆえ避けてはみたが、その程度の炎であれば回避するまでもなかったか」 

一瞬の攻防の後、再び距離をとった馬頭。その表情から薄笑いは消えていない。

「では次はこちらの手番だな。わが神速についてこれるか?」

 青龍刀を左手に下げ、右手で印を結ぶ。同時に馬頭の周囲で風が渦を巻き始めた。

「風よ、集え。疾風走馬!」

 すると渦巻く風に全身を包まれた馬頭の体が次第に浮き上がっていく。


「面妖な!」

 金棒を手にした龍燈鬼が突進していく。

「遅い!」

 ブン、と姿がぶれたかと思うと、風に化したかと思うほどの速さで龍燈鬼の金棒を躱し、一気に厩戸の後方へと移動する。


「風よ、鋭き牙となれ!牙風破!」

 馬頭の周囲に生成された風の刃が鋭い弧を描きながら厩戸へと殺到していく。

「させるか!」

 天燈鬼の張った防御の結界が風刃の行く手を遮る。

 ガガガガガ!

 風刃が結界に激突する音が響き渡る中、馬頭はさらに数百の風刃を背後に生成した。


 それに対し、厩戸は静かに目を閉じ、集中を高めていく。

 アスラの言葉が甦る。そう、想いの強さが術の威力を左右するのだ。

 天燈鬼たち家族への想い、善徳や刀自古、仲間への想い、そして何より強くありたいという想い。心の内の炎を大きく、強く、激しく燃え上がらせる。


「オン・アグニャ・シャバダ・ウン」

 厩戸の前に紅蓮の炎が渦を巻いた。その炎の色が次第に変化していく。紅蓮を超えたその先、向日葵を思わせる鮮やかな黄色の炎、それが巨大な龍と化し、大きく、強く、激しく燃え上がる。


「ほう」後ろで見守るアスラが感嘆の声を上げる。

「厩戸め、難敵を前に進化するか」


「小賢しい!」

 馬頭が術を発動させ、数百の風刃が厩戸に向けて一斉に打ち出される。迎え撃つのは厩戸の想いを込めた超高温の巨大な炎、黄龍だ。岩肌を溶岩のように溶かしながら馬頭へと襲いかかる。


 ドドドドド!

 轟音が響き土埃が舞い上がる中、鋭利な風刃が黄龍を切り刻み、超高温の黄龍は風刃を蒸発させる。風刃と黄龍が互いの威力を打ち消し合い、爆発的な風圧と熱気に洞穴の一部が音を立てて崩れ落ちた。


「うっ」

 厩戸が肩を押さえて膝をつく。黄龍をすり抜けた風刃が厩戸の肩口を抉ったのだ。

「厩戸!」

天燈鬼が駆け寄ろうとするのを手で制し、厩戸が立ち上がる。

「おのれ!」

 金棒を振りかざし、地面を砕きながら龍燈鬼が馬頭へと迫っていく。轟、と金棒を振り下ろすが、すでにそこに馬頭の姿はない。

「うわははは。力任せの攻撃など、おれには通用せぬわ!」

 馬頭の勝ち誇ったような声が、響き渡る。


 力と技がぶつかり合い、火の粉と風塵が舞う中、厩戸たちの闘いは激しさを増していく。



お読みいただきありがとうございます。評価(星)、ブックマーク、レビュー、感想などぜひお願いします。作者の励みになります。

明日も1話投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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