兄妹
ちょっと遅くなりました。
本日投稿分です。
最後の一撃が空を切った。
勢いを殺しきれず、刀自古は数歩たたらを踏んだ。
肩で息をしている。
額から汗が滴り、黒髪が頬に張り付いていた。
それでも瞳を見れば、まだ闘志を失っていないことがわかる。
「ここまでだ」
アスラは息一つ乱れていない。
刀自古は悔しそうに唇を噛む。
「無理をすれば動きが雑になる。お前の拳は真っすぐだが真っすぐすぎる。だから疲れた時ほど癖が強く出る」
刀自古は反論しかけたが、抑えた。実際、アスラの言う通りだったからだ。次第に焦りが出て、動きが大振りになっていた自覚がある。
「一発も入らなかった」
刀自古の言葉にアスラは小さく笑った。
「なに、その年でここまで動ける者は稀であろう。なあ、善徳よ」
急に話を振られて善徳は苦笑した。
「刀自古は十分すごいと思うぞ」
「兄さま!」
刀自古が振り返る。
その顔を見て、善徳は少し驚いた。
悔しさは隠しきれないが、先ほどまでの刺々しさが消えている。
善徳の前まで歩いてきた刀自古が耳元で囁く。
「あの人、本当に強かった」
善徳は思わず笑ってしまう。
「ああ。だから師なのだ」
「でも、次は絶対に一発入れてみせます!」
それをアスラは聞こえていたのか、遠くでくすりと笑う気配がした。
「笑わないでください!」
頬を赤くして睨む刀自古。
「おれはいつでも相手になるぞ」
アスラは楽し気に笑っている。
善徳もまた笑っていた。
刀自古め、負けて終わる気などまるでないのだな。
悔しさを隠さず、それでも前を向く、それが我が妹、刀自古の強さなのだと改めて思ったからだ。
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