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尾行

明日より投稿時間を夕方18時~19時に変更します。

変更にあたり、本日は朝と18時頃の2話投稿とさせていただきます。

2話投稿予定の1話目となります。

 痺れを切らした刀自古は、善徳付きの女官に話を聞くことにした。いったい我が兄は何をしているのか。思い立ったらすぐに行動に移すのは、この娘の美点の一つである。

 女官が言うには、善徳は夜が明けきらぬうちから屋敷を出、日が沈み切ったころに泥だらけになって帰ってくるとのこと。疲れ切っているのだが、なにやら上機嫌であるというのだ。


 ずるいではないか。

 刀自古は憤慨した。

 あんなに毎日一緒に過ごしていたのに、兄は自分だけなにやら楽しげなことをしている。

 なぜ自分を誘ってはくれないのか。


 兄の帰宅を待ち構えて問い詰めようかとも思ったが、それでは面白くない。

 そうだ、こうなったら兄を尾行し、いったいどこに行って何をしているのか突き止めてやろう。そして言ってやるのだ。刀自古は兄の事なら何でも知っているのです。

 その時、兄はどんな顔をするだろう。

 それを想像すると、なんだか楽しくなってきた。


 次の日、朝早く起きた刀自古は善徳を尾行する。

 善徳は振り向きもせずに迷いのない足取りで都大路を進んでいく。

 弾むような歩きぶりが善徳の浮き立つ心を表しているようで、刀自古の癇に障る。

 何がそんなに楽しいのだろう。

 刀自古の知らないところで兄はいったい何をしているのか。


 やがて善徳がたどり着いたのは都のはずれの古びた屋敷であった。

「ここは確か」

 そう、厩戸皇子さまの屋敷ではないか。

 厩戸さまといえば大王の血を引く高貴なお方だということは、刀自古も知っている。

 そんな方のお屋敷にどうして兄が。

 

 善徳は慣れた様子で門をくぐったが、さすがに刀自古は躊躇する。

 だが帰りはしない。

 兄が何をしているのか、どうしても知りたいのだ。


 しばらく屋敷の前で逡巡していたのだが、次第に面倒になってきた。

 ええい、ままよ。

 意を決して乗り込もうとしたその時、屋敷の庭から善徳の叫び声が聞こえた。

 慌てて庭へと回り込んだ刀自古は、驚愕に目を見開いた。


 金棒を構えた巨大な鬼と対峙した善徳が剣を手に気合を発していたのだ。

 考える前に体が動いた。

 「離れろ、化け物!」

 一気に善徳の前に飛び出し、腰を落として両拳を構えた。


お読みいただきありがとうございます。

考えるより先に体が動く、行動派の刀自古でした。

評価、ブクマ、感想、レビューなどぜひお願いいたします。作者の励みになります。

夕方投稿予定の本日2話目もよろしくお願いいたします。


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