アスラ③
本日3話投稿の3話目となります。
ぎぎぎぎ、と擬音が聞こえるようなぎこちなさで善徳は天断を差し出す。
アスラはその様子を面白そうに眺めている。
「どうした。受け取らぬのか」
これ以上ない程に顔を顰めて言う善徳。
アスラは嘲笑うように腕組みしたまま動かない。
それにしても、とアスラは考える。
アスラから見れば未熟だとはいうものの、人の身で神剣天断をそれなりに扱えるというのは稀有なことだ。この善徳とかいう小僧も異能の持ち主といえるだろう。
それに、厩戸。こいつは明らかに人の範疇を超えている。火界の理を刻むという荒行、それに耐えうる魂の器。本来それはあり得ないものだ。人であれ、人以外の怪異であれ、それに耐えた例をアスラは知らない。それでも厩戸の魂を覗き見たとき、おそらく耐え得るであろうことをアスラは直感した。そして厩戸は実際に耐えてみせた。
天燈鬼、龍燈鬼、この二体の怪異も不思議だ。本来、このような高位の怪異が人となれ合うことはない。ところがどうだ、まるで厩戸を護るように付き従っているではないか。そして厩戸もそれを自然に受け止めている。
明らかに、あれの影響であろうな。
この極東の島国の地のいずこかに、あれはあるはずだ。
それも、おそらくは極めて近いところに。
厩戸や善徳のような異能を持つものが生まれたのも、高位の怪異の存在も、そう考えれば説明がつく。
ふん。アスラは皮肉な笑みを漏らす。
結局、だれよりも先に俺がこの地に到達したということか。
厩戸たちと巡り合ったのも僥倖だった。
だが、とアスラは考える。
俺が自らの封印を解いた波動は至る所に到達しているであろう。
天界でも俺が目覚めたことを気付いた奴がいるはずだ。早晩動き始めるに違いない。
いずれ、この地で争いとなるのは避けられぬ。
天界の奴らも俺と同様、この世界ではこの世界の理に従わざるを得ない。郷に入れば郷に従えとはよく言ったものよ。奴らもその能力を常時開放することはできぬはず。ならば、奴らはおそらく人であれ怪異であれ、この地のものどもを使役してあれを手に入れようとするに違いあるまい。
だとすれば。
アスラは厩戸と善徳を見る。
まさに僥倖というべきであろうな。こ奴らと出会ったということは。
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明日の投稿ですが、明日から北見出張のため、早朝1話、夕方1話の2話投稿を予定しています。
北海道の北見といえば、ハッカと焼き肉の町ですね。
出発前と到着後にそれぞれ1話投稿予定です。
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