アスラ①
おはようございます。
本日3話投稿の1話目です。
人外の闘いに呼吸すら忘れて圧倒され、立ち尽くしていた厩戸たちであった。
既に三面六臂の姿を解き、少年の姿に戻ったアスラが振り返る。
「どうした?何を呆けておる?」
その声に、ようやく我に返った厩戸がため息をついた。
「アスラどの、ご助力いただき、まことにありがとうございます」
フン、と鼻を鳴らしたアスラではあったが、満更でもない表情である。
「なに、俺にとっては赤子の手をひねるようなものだ。何ほどのことでもないわ」
すると、善徳が不平を鳴らす。
「であれば、最初から出てくれば良いものを。そもそも夜叉どもはお前を追ってきたのであろう?おかげで何度か死にかけたわ」
そう吐き捨ててアスラを睨みつけた。
天燈鬼や龍燈鬼もその通りだと言わんばかりに頷いている。
「貴様らが死のうが生きようが俺には関わりのないことだ。何も知らぬ小僧は黙っておれ」
そう言ってそっぽを向くアスラ。険悪な雰囲気が漂うところに厩戸が割って入った。
「アスラどの、申し訳ありませぬ。それよりも、肩の怪我は大丈夫でありましょうか。随分と深い傷のように見えましたが」
「ふむ。大した傷ではない。ほれ、この通り」
アスラが自らの傷ついた肩を軽く撫でると、傷口が金色に輝き、きれいに塞がった。
自己修復の術まで心得ているのかと、厩戸は舌を巻いた。
このアスラという人外の存在、いったいどれほどの能力を持つのであろうか。ましてや先ほどの神々しいまでの姿。三面六臂の異形とはいえ、その姿を目にした瞬間、圧倒的な存在感に息をのんだ。厩戸の知る怪異どもとは存在としての格が違うことを即座に理解させられた。
「アスラどの。圧倒的な武力に加えて自己修復能力、さらに三面六臂の異形。われはあなたを何と呼べばよいのでしょう」
思わずそう問いかけた。
「ふん、最初に申したであろう。俺は俺であって俺以外の何者でもない。俺はアスラ、六道の覇王、アスラだ」
「なるほど、確かに三面六臂の姿で闘う様は、まさに覇王と言うに相応しい。あれこそがアスラどのの本来の姿とお見受けいたします。しかし、なぜ今はそのような儚き少年の如き姿に戻られたのですか」
「それこそお前の知ったことではない、と言いたいところだが、まあ良い」
そう言うとアスラは厩戸に向き直った。
闘いの残滓が未だ漂う中、自らの秘密について語り始めたのだった。
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