アスラ顕現
本日3話投稿予定の2話目です。
漆黒の悪鬼と化した夜叉王が、足音を轟かせながらアスラへと迫っていく。
アスラは立て続けに雷撃を打ち込むが、夜叉王の身を包む漆黒の炎に弾かれてしまう。
夜叉王は大きく腕を振りかぶり、アスラに向かって振り下ろした。
すると漆黒の炎が燃え盛る矢となってアスラに襲い掛かる。
それをぎりぎりで避けるアスラ。
だが夜叉王の攻勢はそれだけでは終わらない。
蹴り上げる足から、鋭く打ち込む肘から、横薙ぎに払う拳から、そのすべての打撃から漆黒の炎が打ち出される。
その戦いの余波が厩戸たちをも脅かす。
アスラの回避した漆黒の炎の矢を天燈鬼が結界術で弾き返した。
「なんという威力だ。厩戸よ、このままでは結界も長くはもたぬぞ」
「厩戸どの、いっそ我らも加勢すべきではありませぬか」
天燈鬼と善徳の声に、厩戸は静かに首を振る。
「我らの力量ではかえって足手纏いとなろう。それにアスラどのには、まだまだ余裕があるようだ」
防戦一方に見えるアスラだが、確かにその口元には微笑が張り付いたままである。
アスラは炎の奔流の中で舞っていた。
黒炎が矢のように、槍のように、時には鞭のように襲い掛かる。
その一撃一撃が地を裂き、空を焦がし、岩を砕く。
だが、アスラは退かない。
むしろ華麗に舞いつつ夜叉王へと近づいていく。
夜叉王の眼が怒りで歪む。
次の瞬間、その肘から放たれた黒炎が刃と化し、アスラの肩を切り裂いた。
夜叉王が歓喜の雄たけびを上げる。
だが、アスラはかえってその笑みを深くした。
「魂なき夜叉の王よ、真の恐怖をその身に刻み、地へと還れ」
印を結んだアスラが静かに呪を唱える。
「アハン・アスラハ!(我は阿修羅なり!)」
刹那、まばゆく輝く黄金の光がアスラの全身を包みこんだ。
思わず瞳を閉じた厩戸たち。
慌てて目を開いたとき、そこには黄金に輝く三面六臂のアスラの姿があった。
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