夜叉との闘い
本日3話投稿の3話目です。
一方、厩戸はと言えば。
その戦いはまさに佳境を迎えていた。
群れを成して迫る夜叉。敢然と立ち向かう二体の鬼。
龍燈鬼の金棒が閃き、天燈鬼の拳が雷鳴のように轟く。
倒れ伏した夜叉の魄を厩戸の業火が焼き払い、地へと還す。
しかし、群れは簡単には尽きない。
二体の鬼には敵わぬと見たか、一体の夜叉が大きく回り込んで厩戸に襲いかかった。
その刹那、銀の閃光が闇を裂く。
「退け!厩戸どのには指一本触れさせぬ!」
蘇我善徳、そして神剣天断。
刃は夜空をも断つかのように輝き、振るうたびに風が唸りを上げ、夜叉は近づくことさえできない。
その戦いをアスラは満足げに見ている。
「うむ。厩戸とあの小僧、思った以上にやりおるわい」
順調に夜叉の数を減らし、戦いが終息に向かうと思われたその時だった。
闇をも砕く咆哮が轟き、夜叉の群れが二つに割れた。
あまりに強烈なその咆哮に、魂無き夜叉すらも怯え、震えている。
「厩戸どの、あれは」
天断を握る善徳の手に汗が滲み、厩戸の衣が風に波打つ。
姿を現したのは、王とでも呼ぶべき威容を誇る、一体の巨大な夜叉であった。
その圧倒的な存在感に、戦場全体が飲み込まれる。
最初に動いたのは、二体の鬼だ。
龍燈鬼の鉄棒が唸りを上げ、夜叉王の腹に叩きつけられた。だが、弾き飛ばされたのは鉄棒の方であった。
そこへ天燈鬼が飛び込んでいく。青白い電光を纏った拳を叩きこむ。だが、浅い。むしろその反動で、天燈鬼は肩を焼かれてうずくまる。
すかさず夜叉王が腕を振るう。
その一撃で二体の鬼は吹き飛んだ。
その瞬間、夜叉王の魄を的に厩戸が火界呪を唱えた。
全てを焼き尽くさんと紅蓮の業火が夜叉王の全身を覆う。
だが、夜叉王が再び腕を一振りすると、炎は霧散し消え去った。
夜叉の群れの中央に仁王立ちする夜叉王の瞳が、厩戸を捉える。
一気に跳躍して厩戸の前に降り立った。
「いかん!」
善徳が厩戸を庇い、天断を構える。
それを意に介さず、夜叉王はその凶悪な拳を厩戸たちに叩きつけようと振りかぶった。
「厩戸!」二体の鬼が悲痛な叫びを上げる。
轟!
唸りを上げる拳が厩戸たちに向けて振り下ろされたその瞬間。
まばゆい金色の光が閃き、衝撃波に戦場が揺れた。
アスラ。
夜叉王の剛腕を軽々と受け止め、不敵に微笑んでいた。
アスラ参戦!
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