封印された王
本日3話投稿の2話目です。
「厩戸よ、あれを見よ」
龍燈鬼の指す方向を見ると、不思議な紋様が刻まれた石柱が4柱、巨大な塊を取り囲むように建てられている。どうやらこの石柱が、その何者かを封印しているようだ。
「これは、結界術であろうか?」厩戸の問いに龍燈鬼が首を振る。
「いや、これはわれらの知る術ではない。石柱に刻まれているのは恐らく呪言であろうが、われらにこれを解く術はない」
「蘇我の呪言師に任せてみてはいかがでしょうか」
「われらでさえどうにもならぬものを、人にどうにかできようはずがあるか」
善徳の提案を天燈鬼が面倒臭そうに否定した。
「そう無下に否定するものでもあるまい。蘇我家の呪言師は凄腕と聞くぞ」
厩戸がそう言うと、善徳は嬉しそうに頷いた。
「ですが善徳どの、いずれにせよ、今はどうにもなりませぬ。まずは地上に戻ることが先決でしょう」
封印されているのが何者であるか気にはなるが、洞穴はまだ続いている。厩戸がその場を離れようと歩き出したその時、ささやくような声が聞こえた。
「マテ、マツノダ」
驚いて振り返ったが、誰もいない。気のせいかと思い、歩き始めようとすると、再び声がする。
「マテトイッテイル」
どうやら間違いない。何者かが厩戸に話しかけている。無論、天燈鬼や龍燈鬼、善徳であるはずがない。だとすれば。
厩戸は広間の中央にそびえる水晶へと振り返る。
「おい、厩戸、どうしたのだ?」
天燈鬼たちには、この声は届いていないようだ。
厩戸は水晶の前に立ち、封印された何者かをじっと見つめた。
「ホウ、ヤハリキコエテイルカ。オモシロイ」
暗く輝く水晶の中に封印された何者かが厩戸に語り掛けている。
「あなたはいったい何者か?」
「ワガナヲ、トウカ。マスマスモッテ、オモシロイ。キサマ、ナヲナントイウ」
「厩戸。わが名は厩戸だ」
「デハ、ウマヤトヨ。『オン・アスラ・ガーラ・ラヤーン・ソワカ』コレヲ、ミタビトナエヨ」
「三度唱えよというのか」厩戸が問うと、それを肯定する波動が感じられた。
怪しげといえば確かに怪しげではある。だが、鬼どもに育てられた厩戸には怪異に対する恐怖や嫌悪などは欠片もない。むしろ、どうなるかという興味のほうが強かった。静かに頷き、水晶の前に立った。。
「オン・アスラ・ガーラ・ラヤーン・ソワカ」
「オン・アスラ・ガーラ・ラヤーン・ソワカ」
「オン・アスラ・ガーラ・ラヤーン・ソワカ」
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