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飛鳥異聞~日出処の天子と六道の覇王アスラ  作者: ダンケ
第1章:飛鳥擾乱

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徐福

7/29 本日投稿分です。

 物部屋敷の一室にしつらえた祭壇の前で、徐福は宇陀野洞穴での闘いを思い返す。

「それにしても、あの厩戸という皇子、潜在能力は大したものだわい。危うく牛頭馬頭を失うところであったわ」


 最後の瞬間に厩戸の放った超高温の火炎。

 徐福が召喚を解除しなければ、牛頭馬頭を直撃したであろう青い炎。

「人の身であれほどの術を行使するとは」

 人の身で。

 自分の言葉に徐福は苦笑いする。

「そういえば、このわしも人であったわ」


 人であるからという理由で自ら限界を設けることの愚かしさを、徐福は誰よりも知っているのだ。

 血が滲むなどという言葉では全く足りぬほどの努力を重ね、徐福は鬼道を極めてきた。毘沙門天の加護により不老を得たことで、さらに努力を積み重ね、天界の神仏にも勝るほどの力を得ることができたのだ。


「だが、あの年齢であの能力は、やはり異常というべきか」

 無論、本人の異能もあろう。

 この地にあったアムリタの影響もあったかもしれぬ。

 しかし、それだけではあの異常な能力は説明できない。

「やはり、アスラか」

 アスラが何らかの形で導いたと考えるべきであろう。


 徐福は、長年に亘るアスラとの争いを思い返す。

 これまでアスラは常に一人で闘ってきた。

「そのアスラが、人を育てるだと?」

 しかも厩戸だけではない。

 剣を使う蘇我の嫡男。

 その妹の拳法使い。

 厩戸に付き従う二体の怪異。

 それに加えて、今回は治癒の呪言の使い手まで。


「やれやれ、厄介なことだわい」

 徐福はため息を漏らす。


 おそらく厩戸たちは病のアムリタを手にしたであろう。

 だが、徐福はそれほど悲観してはいなかった。

 悲願である始皇帝の復活には、八分割されたアムリタ全てが必要なのだ。

「いずれ奪い返す機会もあろう」

 だが、相手はあのアスラだ。


「さて、どうするか」

 仲間を得たアスラは、これまで以上に始末の悪い難儀な敵となるだろう。

 それに対抗するためにどうすればよいか。


「まずは、わしの鬼道の力を強めるか」

 鬼道の源となるのは人の苦痛、悲嘆、怨念、そういう負の感情からなる陰の気だ。瘟鬼による疫病の拡散は、そのための手段であった。

 だが、この手はもう使えない。

 病のアムリタがアスラの手に渡った以上、早晩、疫病は鎮圧されるであろう。


「やはり、権力を握るのが得策か」

 大王を傀儡とし、朝廷の権力を掌握、その力を徹底的に利用する。

 この国を地獄に変え、民の苦痛、怨嗟、怨念を集めるのだ。

 そうすることで、わが鬼道はさらに強力な術となろう。


 さらに、この国の各地に存在するであろうアムリタ。

 国家の権力をもってその情報を収集し、分析し、探索する。

 情報戦。

 それもアムリタを巡る争いの帰趨を決する重要な闘いとなるだろう。


 物思いにふける徐福。

 その部屋に突然、屋敷の主、物部守屋が現れた。


「徐福よ、敏達大王が崩御された」

 守屋は、興奮に顔を赤く染め、早口でまくし立てる。

「次の大王選びが始まる。蘇我を打ち倒す好機がやってきたのだ」


 好機だと?

 徐福は、顔を伏せたまま凶悪な笑みを浮かべた。

 確かに好機だ。

 願ってもない好機がやってきたわい。


 徐福の眼が怪しく光る。

 飛鳥の地に、新たな騒乱が始まろうとしていた。


<第1章 完>


お読みいただきありがとうございます。

これにて、第1章は終了。

お付き合いいただいた皆様に感謝いたします。

さて、第2章開始まで、2週間ほど時間をいただきます。

再開は、8月のお盆明けの予定です。

開始が前後することもありますので、可能であればブックマークをお願いできればと思います。

では、再開まで、しばらくお待ちください。

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