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飛鳥異聞~日出処の天子と六道の覇王アスラ  作者: ダンケ
第1章:飛鳥擾乱

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それぞれの闘い

7/23 本日投稿分です。

 巨大な盾を構えた天燈鬼、頑強な鎧を身に纏った龍燈鬼が、巨矛を構えて仁王立ちする牛頭と対峙している。

 天燈鬼たちの後方では善徳が静かに目を閉じ、集中を高めていた。


 牛頭は獰猛な笑みを浮かべると巨矛を担ぎなおし、咆哮とともに地を蹴る。

 岩盤を砕きながら突進してくる牛頭の前に、天燈鬼が立ちはだかった。

 巨大な盾を牛頭に叩きつける。

 轟音と共に牛頭へと叩きこまれた衝撃で大地は震え、岩盤に放射状の亀裂が走った。


「むう」

 突進を止められた牛頭と天燈鬼の盾が鬩ぎあい、動きが止まったところへ龍燈鬼の金棒が唸りを上げる。

 土の真気を纏って威力を増した一撃。

「ぐっ」

 牛頭が苦悶の声を漏らす。

 しかし次の瞬間、牛頭の全身の筋肉が膨れ上がった。

「うおおおおおっ!」

 桁外れの怪力で天燈鬼の盾を押し返し、龍燈鬼を蹴り飛ばす。

 二体の鬼と距離を取った牛頭は不敵な笑みを浮かべている。

「いいぞ、お前ら。それでこそ叩き潰す甲斐があるというものだ」

 牛頭の闘気がさらに膨れ上がった。


「ふん、この程度で感心されてもなあ、龍燈鬼よ」

「おう、まだまだこれからよなあ、天燈鬼よ」

 二体の鬼が頷きあう。

 

 天燈鬼が牛頭に向かって突進していく。

 その後ろを龍燈鬼が走る。

 天燈鬼の突進を牛頭が巨矛で受け止める。

 その瞬間、龍燈鬼が金棒を振り下ろす。

 振り下ろされた金棒は、牛頭ではなくその足元の岩盤に叩きつけられた。

 轟音と共に地面が波打ち、牛頭の体勢が大きく崩れる。


「今だ、善徳!」

 善徳が跳ぶ。

 金の真気が神剣天断に収束していく。

 真気を極限まで高めた究極の斬撃。

 牛頭は咄嗟に巨矛を掲げる。


 金の剣閃と巨矛が激突し、金属音が響き渡る。

 次の瞬間。

 巨矛の柄が両断され、神剣天断が牛頭の胸を切り裂いた。


「ぐううっ」

 胸元を血で濡らした牛頭が、再び地に膝をついた。


 もう一つの戦場では、厩戸が刀自古と嶋に策を伝えていた。

「われの策とは、至近距離での火炎呪の発動です」


「至近距離?」

 首を傾げる刀自古に厩戸は説明を続ける。

「距離のある状況で火炎呪を唱えても、馬頭は必ず躱します。ですが、われと接触した状態で火炎呪を放てば躱すことはできないでしょう」

「なるほど」

 感心する刀自古。だが、嶋が疑問を口にする。


「ですが厩戸さま。それでは厩戸さまも自らの炎に焼かれることになるのでは?」

 その言葉に厩戸は笑みを浮かべる。

「その通りです。ですから、われが火炎呪を放った瞬間、嶋どのに治癒術の発動をお願いしたいのです。ただ、そのためには、嶋どのにわれの近くにいてもらう必要がある。それは、馬頭に近づくということ。危険に身を晒していただかなければなりません」

 そういうことか、と嶋は得心する。

「承知しました。おまかせください」

 嶋の心強い言葉にうなずいた厩戸は、刀自古に目を移す。


「刀自古どのには、われが馬頭に近づく隙を作っていただきたいのです。馬頭の速度に対抗できる刀自古どのにしかできぬことです」

「承知!」刀自古が目を輝かせ、元気一杯に頷いた。


「では、参りましょう」

 厩戸の声と共に、馬頭に向かって駆け出していく。


「むう、油断したわ」

 家鳴りの襲撃に顔を顰めた馬頭だったが、傷を負ったわけではない。油断さえしなければ、人間ごときに敗れるはずはないのだ。

 それは慢心ではなく確信だった。

 今度こそと、厩戸たちに向き直ったところに刀自古が飛び込んできた。


 水の真気を身に纏い、流水のような連撃が馬頭を襲う。

 馬頭は青龍刀を器用に操りながら、そのことごとくを受け流す。

「見事な拳だが、軽い!」

 余裕を見せる馬頭、その顔面に手に隠し持った流星錘を投擲する。

「なにっ」

 思わずのけぞって躱す馬頭の懐へ一歩踏み込み、渾身の掌底を胸に打ち込んだ。

 馬頭の身体がわずかに浮く。

 その瞬間。

 刀自古と入れ替わった厩戸が馬頭に密着したまま火炎呪を放つ。


 轟!


 紅蓮の火柱が馬頭と厩戸を巻き込み、荒れ狂う爆炎と熱風で岩壁が灼熱する。

 その炎の中から飛び出した厩戸を、嶋の放つ薄緑の光が包み込んだ。

 衣の端を焦がしながらも、厩戸の傷が瞬く間に癒されていく。。


 燃え盛る炎の中から歩み出る影が一つ。

 漆黒の甲冑を焦げ付かせ重度の火傷を負った馬頭が、厩戸たちを睨みつけていた。


お読みいただきありがとうございます。

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明日も1話投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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