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飛鳥異聞~日出処の天子と六道の覇王アスラ  作者: ダンケ
第1章:飛鳥擾乱

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徐福

7/22 本日投稿分です。

 洞穴内での戦闘を見つめる眼があった。

 徐福である。

 洞穴内にある式神の破片を通して、二組の闘いを観察している。


「ふむ、あの小僧ども、なかなかやりおるわい」

 徐福は含み笑いを浮かべる。

 ここまでは、ほぼ互角の闘いを演じているように見える。

 前回の闘いでは、途中でアスラが参戦したことで牛頭馬頭の召喚を解除した。

 貴重な戦力を失うことは愚策だと判断したからだ。

 だが、今回は様子が異なる。


「どうやら、アスラは出てこぬようだな」

 であれば、と徐福は思う。

 厩戸と善徳、この二人を滅する、またとない機会だと。


 徐福の目的は、アムリタによってかつての主君、始皇帝を復活させることだ。

 そのためにはアスラによって強奪され、八分割されたアムリタを全て集める必要がある。

 この洞穴に存在するのはそのうちの一つに過ぎない。

 残りの七つのアムリタの所在は、その手掛かりさえ見つけられてはいなかった。

 だが、徐福は、残りのアムリタのうち、いくつかはこの国のどこかにあると睨んでいる。

 その根拠は、敬愛する始皇帝が最初に徐福に下した命令だ。


「徐福よ。その霊薬は東方の蓬莱にある」

 それを探せ、と始皇帝は命じられた。

 すべてを見通す至高の御方の言葉だ。

 当然、なんらかの根拠があってのことであろう。

 それが何なのかは解らない。

 だが、世界中を渡り歩いた末にこの国に辿り着き、豊かな自然と穏やかで素朴な民の姿に触れた時、徐福はふと思った。


 東方の蓬莱。

 それは、まさにこの国のことではないか。

 緩やかに連なる大和三山、清らかな流れをたたえる飛鳥川。そこに住まう民の顔はどれも穏やかで、素朴な優しさに満ちている。

「平和な国、美しき国か」

 蓬莱、まさに理想郷と呼ぶにふさわしいではないか。


 毘沙門天によってアスラの気配がこの国にあると聞いて以来、徐福のその思いは確信に変わった。

 そして実際に八分割されたアムリタの一つがこの洞穴に存在している。

 残りのアムリタもこの国の何処かにあるに違いない。

 その全てを手に入れなければならない。


 そのためには、と徐福は考えた。

 いかに徐福の鬼道が強力であったとしても、独力ですべてを探し出すには困難を伴う。一刻も早くアムリタを手に入れなければならぬのだ。

 であれば、この国の権力を掌握し、その力を利用すべきであろう。

 国家の権力をもって情報を収集し、分析し、探索する。


 その第一歩として、有力な氏族である物部氏に近づいたのだ。

 物部氏に朝廷内の権力を集中させ、物部氏を利用してこの国の大王を傀儡とし、アムリタの効率的な探索を実現する。

 それが徐福の目論見であった。


 さらに、権力を利用してこの国を地獄に変えれば、鬼道の力の源泉となる。

 鬼道の源となるのは人の苦痛、悲嘆、怨念、そういう負の感情からなる陰の気だ。

 この国を陰の気で染め上げれば、徐福の鬼道はさらに威力を増すであろう。

 そうなれば、いかにアスラが強かろうと、もはや敵ではない。


 そして、物部氏が権力を掌握するために障害となるのが、厩戸皇子であり蘇我氏なのだ。

 絆を力と断言し、怪異を家族と言い放つ異能の皇子。

 その皇子に付き従う蘇我氏の次期当主。

 それがアスラと繋がっているとなれば、なおさらだ。


 厩戸皇子と蘇我氏の嫡男である善徳を一挙に葬ることができるならば、徐福の野望に一歩も二歩も近づくことになる。

 アスラのいない今こそが、その絶好の機会なのだ。

 なんとしてもこの二人をここで討ち果たさねばなるまい。


 狂気に染まった徐福の眼が、洞穴内の闘いに注がれていた。 


お読みいただきありがとうございます。

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明日も1話投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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