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飛鳥異聞~日出処の天子と六道の覇王アスラ  作者: ダンケ
第1章:飛鳥擾乱

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102/119

善徳参戦

7/19 本日投稿分です。

「むうっ。貴様はあの時の」

 牛頭が飛び退き、善徳を睨みつける。


「厩戸どの。遅くなりました」

「ぜ、善徳どの」

 目を見開く厩戸の表情は、喜びよりも驚きの色が濃い。

「どうして?」

 善徳はゆっくりと振り返る。

 すると、後ろに控えていた娘が一礼した。


「厩戸さま、嶋ちゃんです。嶋ちゃんは治癒術の大名人なの」

 刀自古の言葉に笑みを浮かべる嶋だったが、厩戸を見て驚いたように目を見開いた。

「厩戸さま、失礼いたします」

 そう言うと、厩戸に駆け寄り、手をかざす。

「生命の聖霊よ、慈しみの光を」

 嶋の手から淡い緑の光が発せられ、厩戸の全身を包み込んだ。

「こ、これは?」

 牛頭との闘いによる傷が、みるみるうちに癒されていく。


「厩戸どの、嶋のお蔭で命を繋ぐことができました。この通り」

 善徳はそう言うと力こぶを作ってみせる。

 それを見た厩戸にようやく笑顔が戻ってきた。

「そうか。嶋どの、本当にありがとう」

 深々と頭を下げる厩戸に、慌てて首を振る嶋だった。

「精霊たちが、善徳さまの命を繋いでくださったのです。私の力など」


「おい、お前ら。いつまで待たせるつもりだ?」

 腕組みをした牛頭が巨矛を岩肌に叩きつけた。

「特に、お前」

 牛頭は巨矛を善徳に向ける。

「油断していたとはいえ、貴様の攻撃で膝をついたこと、俺は忘れてないからな」


 名指しされた善徳は、不敵な笑みを浮かべて神剣天断を構える。

「ふん。一度で足りぬなら、何度でも膝をつかせてみせよう」

 刀自古や厩戸たちも一斉に身構える。


「牛頭よ、どうやら遊びの時間は終わりのようだ」

 それまで岩壁にもたれて静観していた馬頭が声をかける。

「なんだと?」

「新手が現れたのだ。俺にもやらせろ」

 牛頭は不満そうに唇を歪めたが、渋々頷きを返した。

 馬頭も青龍刀を静かに構え、牛頭の横に並び立つ。

 牛頭と馬頭、二体の闘気が同時に解き放たれた。

 

「厩戸どの、あの二体との闘い方ですが、どう見ますか?」

「牛頭は化け物じみた怪力による力押し、馬頭は高速移動からの術の行使」

 その言葉に我が意を得たりと頷く善徳。

「で、提案です。今回は、刀自古の速さと厩戸どのの火炎呪で馬頭と、天燈鬼どの、龍燈鬼どのとわれが牛頭と」

 善徳の提案に頷く。

「承知した」

「嶋は後方で回復に専念してくれ」

 

「作戦会議は終わったか?」

 馬頭が青龍刀を構え、怪しく光る眼で油断なく見つめている。

「さあ、やろうぜ。殺し合いの始まりだ」

 牛頭が巨矛を振りかざし、獰猛な笑みを浮かべる。


「いくぜ!」

 牛頭の足元の岩盤が砕け、その巨体が弾丸のように飛び出した。

 だが、善徳は一歩たりとも引かない。

 神剣天断を正眼に構え、真正面から迎え撃つ。

 巨矛が唸りをあげて善徳に振り下ろされる。

 神剣が閃く。

 凄まじい衝突音と共に、周囲の岩盤がひび割れる。

「おお、小僧、あれを受けきるか」

 天燈鬼が感嘆を漏らす。

「われらも行くぞ!」

 龍燈鬼が金棒を手に飛び出していく。


 一方の馬頭は、全員の動きを見極めようと目を光らせていたが、厩戸たちが向かってくるのを見て呪文を唱える。

「風よ、集え。疾風走馬!」

 その瞬間、風を纏った馬頭の姿が消えた。

「後ろ!」

 刀自古が叫ぶ。

 厩戸が身をかがめると、その頭上を馬頭の青龍刀が掠めていく。

「火炎呪!」

 厩戸の放つ炎を軽々と躱し、馬頭が二人から距離をとる。

「ほう、俺の動きが見えているのか。面白い」

 馬頭は口の端をあげて青龍刀を構えなおした。


 戦場は瞬く間に二つに分かれ、それぞれの壮絶な闘いが始まった。


お読みいただきありがとうございます。

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明日も1話投稿予定です。

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