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祭響夢幻のセプテット  作者: Gno00
Session.2 ヴォルテックス・ノーツ

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第29話 フェルク・レスタム② 昼前・魔法と技術は『使いよう』

 買い物を終えた後、エリアに備わっていた配送システムを利用し、土産用の食品類を適切な保存状態で指定時刻に届くよう設定したジンは、カプセルの自動運転で1階の様々なエリアを見て回る。

 先程買い物を行った、雑貨や限定グッズを販売するショッピングエリアを含め、ドーム内の主要エリアは全部で4つ存在する。

 魔法を用いた競技や各種スポーツの舞台となる、体を動かす事に特化したエリア『アーク・フィールド』。そこは一般利用も可能で、オフシーズンでは一般客もプールやサッカー場等を利用できる。

 演劇やファッションショー、映画上映等視覚からの美を追求するエリア『ルミナ・スクエア』。エリアの大半が一般客立ち入り禁止だが、美術館や博物館になっている一部だけは自由に出入り出来る。

 そして、今現在『フェルク・レスタム』のメインステージとなっている音楽の聖域『セレスティアル・ホール』。音響と魔法効果を最大限発揮させるステージで、主要エリアの中で一番広大な面積を占める。


 セレスティアル・ホールとショッピングエリア以外のエリアは『フェルク・レスタム』開催中故に人足が少なく、ジンも結華に対し簡単な概要を説明する程度に終わった。

 時刻は11時を回り、エリア案内も切り上げるべきタイミングと判断した為に。


 いよいよライブステージへと出向く事となったジンはカプセルの中、専用且つ使い捨ての容器に入った棒アイスを取り出す結華の姿を見た。

 先端を少しだけ噛み、歯に一際冷たい感触が当たった彼女は驚いた顔を見せた。



「ここに来て、甘い物が好きになったか?」


「色んな『甘い』があっておもしろい。とてもひんやりした甘いもあるんだ」


「それって買い物ついでで買った奴か?」


「うん。開けるまでとけないアイス、って聞いたから」



 程よい厚さのソーダの層を舐め溶かすと、バニラアイスの層が目に映る。口溶けの良い上品な味わいが彼女の口の中で広がった。

 一方で、使い捨ての容器を調べるジン。プラスチック製の容器の中には保冷の魔法陣が刻まれており、現代技術と魔術の融合が成せた技だと理解する。



「魔法も工夫次第ではこういう使い方が出来るんだな」


「わたしの持ってるお人形みたい」


「そういや、ちっこい人形を出せるんだったなユイカは」


「さいきんになって、あたらしいおともだちが出来た」



 返答を待たずに結華は空いている右手の手のひらへ新しく加わった指人形を出現させる。

 それは、結華の魔法少女としての姿――マレオルトフィを簡略化した見た目をしていた。



「これは、オマエ自身か」


「これをつかって〝いなずまだん〟を出せる。へんしんしてなくても何も出来ないわけじゃない」


「そうなのか。……変わっちまったなァ、オレ達」



 片や変身能力が拡張され、音楽に沿った魔法を扱えるように。片や魔力の運用方法を発現し、骨を生成させ体術と併用できるように。

 改めて、力を得た事を実感する。少し前まで無力な存在だったのが嘘だったように。


 ジンの言葉を聞いて、アイスを食べながら結華も考える。



「アイスをいつでもおいしく食べられるように。まほうも使い方しだいで色んな人のえがおを守れる」



 服屋の店主。スイーツ店の店員2人。怪我をした子ども達に、彼らの両親。

 全て『べモン・ベルス』に立ち向かい、守ってきた人々だ。結華の言葉に、今度はジンが頷いた。



「…だな。あんなフザケた連中に勝手な事はさせらんねェよ」


「きっと、今日の夜に来る。大変なこと、するために」


「まァ比べ物にならねェだろうなァ。だが、『フェルク・レスタム』の邪魔はさせねェ」


「もしたのまれたら。いっしょにがんばろうねお兄ちゃん」


「勿論だ」



 会話が終わった頃合いで、次の目的地であるセレスティアル・ホールへの連絡路が見えてくる。

 停車スペースにカプセルが止まった時、丁度結華もアイスを食べ終わったのだった。



 セレスティアル・ホールに限らず、主要4エリアは全3階層構成を余すこと無く活用している。

 音楽用エリアに関しては座れる観客席の自由度が高いだけで無く、主役であるアーティスト側も設備や自身の魔法能力を適切に扱う事で普段よりもダイナミックな演奏、パフォーマンスを演出出来る。

 ステージを取り囲む形に広がる観客席には、既に8万人もの観客が集っていた。1日目は中継映像越しに伝わってきた熱気と音響がダイレクトに伝わってくる。

 けたたましいまでのそれらに、圧倒される感覚を抱きつつもジン達は敢えて前に出る。


 今現在ライブを行っている4組目のアーティスト、ガールズロックバンドの1つ、『アンティロフィ』だ。

 アリーナ・ロックを主軸とするバンドであり、技巧派な一方で、客受けの良いパフォーマンスが多いバンドである。

 そんな彼女達はそれぞれ、浮遊し観客席を見て回るように動く足場の上で演奏している。


 エレキギター担当のリーダー格らしき少女とジン達の目が合うと、注目する少年達へ左目のウィンクと、慣れたファンサービスを自然な形で混ぜる。

 定石を少し外してはいるが彼女達は自らの実力でもって、自然且つ耳心地の良い演奏を実現させる。

 初めて聞くアーティストだが、彼女達の曲に心地良さをジンは覚えた。そして、山場を迎え演奏が終了した時、割れんばかりの大歓声が一仕事終えたばかりの彼女達へ投げかけられた。

 観客達へ両手で手を振る『アンティロフィ』のメンバーには好感を抱ける。「寧ろ、それが狙いなのでは無いか?」とジンは思いつつも彼女達を労う声に混ざるのだった。



「お兄ちゃん、聞きほれた?」


「そんな感じかもな。『アンティロフィ』……覚えておくかァ」


「気に入ったアーティストは、他の曲も聞いてみるといいかも」


「考えておくぜ。……っと、もう終わりなのか。そそくさ荷物纏めていくが」



 先程まで観客席の手前側を飛んでいた足場がきれいにステージへと収まり、それから『アンティロフィ』のメンバー達は急いでステージ上から離れた。

 その間もファンサービスを欠かさず、最後まで自分達の爪痕を残そうとしていた。

 


「こういうやり方もあるんだね」


「ファンと向き合う事を意識した結果、なんだろうな」


「『リキッド・フォレスト』のばんが来るよ」


「そいつは聞き覚えがあるな。つっても名前くらいしか覚えて無いが……」


「教えてあげるね。『リキッド・フォレスト』は――」



 次のバンドである『リキッド・フォレスト』の概要を説明している内に、彼らはステージへと登壇し、歓声や拍手でもって出迎えられた。

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