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雷帝と呼ばれた最強冒険者、魔術学院に入学して一切の遠慮なく無双する  作者: 五月蒼
五章 黒い霧

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瞬殺

 白い閃光が、上空に陣を取る。


 天上に無数の光弾が生成される。それが一斉に、ノアめがけて降り注ぐ。

 "ジャッジ・レイン"――審判の雨。


 一つ一つにとてつもない魔力が込められており、逃げ場を断つ面制圧型の魔術だ。


 その光景に、観客席が沸く。

「キルシェ様の本気だ……!」

「もう終わりだ、一年なんて一瞬だろ!」


 俺を見る貴族たちの目は、もう結末を確信していた。

 生意気な一年生はこれで終わりだと。


「へえ、結構面白い魔術使うじゃん」

「ほざけ!! 避けられるか!?」


 なるほどな。

 テトラルクス選抜に選ばれるだけはある。

 この密度、この速度。確かになかなかの魔術師だ。


 ――だが。

 ノアは、歩いた。


 光弾の隙間を縫うように、一歩、また一歩。

 白い閃光が左右の地面を抉る。背後で轟音が連なる。


 こいつ自身の性格と同じ。分かりやす過ぎる。

 これだけ素直な軌道、普通に避けられる。


「な……っ!?」


 キルシェの目が見開かれる。


「こいつ、全弾の軌道を見切ってやがるのか!?」


 キルシェの額に、冷や汗がにじんでいるのが見える。

 さっきまで余裕だった顔は、一歩近づくごとに愕然とした表情に変わっていく。


「あの一年……避けてる……? 嘘だろ……?」

「いや、キルシェ様は遊んでいるんだ!」

「おぉ……なるほど、趣味が悪い!」

「さすがキルシェ様!」


 うおおお! と歓声が上がる。

 だが、その周りの歓声とは裏腹に、キルシェの顔はどんどん焦燥感に染まっていく。

 

「ありえん……ありえんありえんありえん!! こんなことが……!! あってはならない!!」


 キルシェが戦術を切り替えた。

 面制圧をやめ、右手に魔力を極限まで凝縮する。白い光が腕全体を覆い、演習場の空気がびりびりと震える。


 本気の本気だ。持てる魔力の全てを一点に注ぎ込んだ、一撃必殺の構え。


「舐めるなよ……! 一年風情がぁあああ!!」


 キルシェが右腕を突き出す。白い光が、ノアに向かって炸裂する。


「きた!! キルシェ様の最高魔術が!!」

「やってしまえ、キルシェ! 多少怪我しても構わないさ!!」

「見せてくれ、貴族の力を!! 俺たちの誇りを!!」


 一気に盛り上がり、会場のボルテージは最高潮に達する。


「これで終わりだああああ!!」


 ――瞬間。


 一瞬で間合いを詰め、キルシェの右腕を掴む。

 いつ動いたのか、誰もその目で追えていなかった。


 脚に走った雷は、地面に焼け焦げたような黒い跡を残す。


「…………は?」


 キルシェの目が、大きく見開かれる。

 その目は、恐怖に染まっていた。


「思ったより大したことないな、二年も」

「何……なんなんだ貴様は……ッ!!!」

「ルルシアの仇、取らしてもらうぜ――《《先輩》》」

「待ッ――」


 瞬間、左手から放ったスパークは、キルシェの身体を駆け巡る。


「ぐうああああああああ!!!!」


 キルシェはがくがくと震えながら、膝から地面に崩れ落ちる。

 制服が焼け焦げ、既に気を失っていた。


 演習場が、沈黙した。


 誰も、今の状況を理解できず声を上げない。

 さっきまで罵声を浴びせていた貴族たちが、石のように固まっている。


 テトラルクス選抜の二年生が、一年生に――一瞬で封じられた。

 その事実を飲み込むのに、全員が時間を必要としていた。


「ノア様……!!」


 ルルシアが涙声で叫び、駆け寄ってくる。


「すみません、私のために……!」

「気にすんな」


 客席のアーサーも、口を半開きにして唖然としている。

 ニーナは両手で口元を覆う。


「相変わらずとんでもねえな……あいつ……!」

「ノア君……凄い……!」


 しかし、クラリスだけはふっと笑みを浮かべる。


「バカね。ノアに敵う訳ないでしょうが」


 クラリスだけが、静かに目を細めていた。


◇ ◇ ◇


 静まり返った演習場の最上段。人目につかない、影に沈んだ席。

 全てを見届けていた、ブロンドヘアの圧倒的な美少女が、静かに立ち上がる。


 リリベル・アナーシア。

 

 彼女は、冷めきった目で地面に倒れるキルシェを見つめる。


「…………邪魔ね」


 リリベルはそう吐き捨てる。

(……評判を落とす程度では、足りないわ)


 キルシェが一瞬で潰された。

 それなりに使えると目をかけていた男が、あっさりと崩された。


(キルシェはただの二年じゃない。……それを、あそこまで一方的に……。ただの一年生じゃない。間違いなく、本物の化け物)


 リリベルの瞳が冷たく細まる。


(力で潰すのは無理。少なくとも、正面からでは。であれば……)


 リリベルは音もなく席を離れ、誰にも気づかれることなく演習場を後にした。

 その頭の中では、もう次の糸が紡がれ始めていた。


(取り込む。それも無理ならば、その時は……)

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