紛争地帯にて(4)
「うーん……なんだか小難しいことになってますね」
「あー、ワケわかんなくなってくるな~。なぁスゴロクさん、せっかく考えてくれて悪いんだけど」
「これは飽くまで余の仮説である。発表などしないし、貴公らに押し付けて役割の邪魔をしたりもしないさ。世の中、解けない謎の一つや二つあった方が良いのだろう」
ジャスティンは「そう来なくちゃ」と請合い、今度こそ席を立つ。簡素な小屋に飾られた武具の前に立った。
「ちょっと戦場の様子でも見に行ってみるかい、スゴロクさん。トラウマあるならあるでいいけど、俺はあんたに見てもらいたくなったよ」
がちゃがちゃと純白の甲冑を着込みながらでも、男声アルトの声はよく届いた。
旅程に大胆さを必要とするなら、それが弱っているとするなら、取り戻すのは今であった。「随行させてもらう」
今までより少し開き直って、魔王は頷いた。
三人は転移術で北方大陸に到着すると、『隔絶の結界』を踏み越えて(ぐにっ、とか音がしたが無視)戦役終結直後から続くと言われる激戦の場へと入った。
「……ふむ」
「ちょっと小さい島みたいになってんだよ、ここ。すごくヘンだろ」
「地理的地形的な変異や差異はこの際置いておこう。よくある話である」
「そうなんですか……僕も見てみたいものです」
『隔絶の結界』で見事に区切られた『島』を見渡せる物見やぐらの上で言葉を交わす。
「っと、今日も始まったぜ!」古めかしくも荘厳なほら貝が響き渡った。
高く広い視界から見下ろせば、城、黒、灰、赤の旗印を掲げた城から、わらわらと兵士が出撃していくのが分かる。
「……戦争、か」
「黒の国から独立を求める灰の国が兵を起こした。赤は便乗して『島』の覇権を狙い、白は完全なとばっちり。『隔絶の結界』が、外からの来訪を拒んでもいる。ここァ小さな『異世界』って言っちまってもいいかもしれんな」
「なるほどな……、済まぬが貴公ら、先に仕事に取り掛かってくれないか。必ず合流する」
「ご気分が悪いのですか」
いや……とつぶやいた魔王の脳裏に、何の脈絡も根拠もない閃きが奔った。西の騎士団領で見かけた四冊の本のことが、やたらと気になる。
「それなら構いません、僕らは先に行っています。行こうジャスティン」
「ああ!」
二人の『勇者』は加速魔法を組み立てると、塔のように高いやぐらを駈け下りて行く。
魔王は真剣な顔で何かを考えた後、転移術を行使した。
2016年 03月02日 14時58分 公開




