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雑談、もしくは……

「ミシェーラ殿か。なかなか楽しき御仁ごじんであるな」

「はい。明るくて優しい、良い方です」

 ホテルの一室を借り切ってのスキヤキ宴会を終え、スゴロクはロデルとの雑談を楽しんでいた。

「ね、スゴロクさま。『魔王や勇者を目の前にすると血が騒ぐ』って仰ってましたよね」

「うむ。こればかりはいくら老成しようと熟慮じゅくりょを身につけようと、どうしようもないようだ」

「それはやっぱり、戦うとかの意味でですか?」

「そうだな。もはや血脈に刻み込まれた、我が種族の本能なのだろう。どうした、『勇者』たる者が気になるか」

「はい……とても気になります。今のわたくしとは違う仕方で、その、貴方様を魅入みいらせてみたいと……。はっっ、恥ずかしながら、そう思っておりますです……」

 ぼん、とばかりに真っ赤になる小さな恋人に笑みかけ、いつものように膝に抱える。

「魔王軍に籍を置いているとはいっても、お前は『魔王』の力を持っていない。なろうと思えばなれる、勇者だろうと何だろうとな……そういうものだ」

 小さく首肯しゅこうするロデルの頭をくしゃくしゃとやり、「もう一人、余はおもしろき勇者を知っておるぞ――そのうちに会えよう」

「え!?」

「これまで黙っていたことだが、ロデルよ。余の養子……お前の下のきょうだいらは、皆『覚醒』を終えて自立した。余やお前がいずとも、わが国を支えることはできる。

――と、末のマティルダが進言しに来たことがある。義姉上あねうえに休みや自由を満喫させて欲しいと、余にはそう願ってくれているそうだ」

 魔族はハーフやクォーターを含めて、ある時を境に老いを経ることがなくなる。身体と精神が成熟し最も充実した瞬間が、彼らには実感できる。

 それは『覚醒』と呼ばれ、年齢や容姿に関わらずまた種族を問わず迎えるものである。

 先ほどスゴロクが名を出したマティルダはよわいにして12でそれを終えた、おしゃまな末の娘だ。

「……それで急に、夏休みを取ろうと」

「ああ。ロデルには色々と世話をかけているからな。公休制度は前から取り入れてみたかったが」

 これまでよりも自由に、したいと思ったことを試せ……と。魔王は真面目すぎるほど真面目な側近に告げた。ロデルの真紅しんくの瞳が、よろこびに輝いた。

「では、では本当に、スゴロクさまの旅に同行しても、良いのですか」

「一人旅でなければならん理由がないンだよなぁ。この間も言ったとおりさ、ロデル」

 魔王軍いちの伊達男グィスパの口調を真似て、初めて意識して気障きざな振る舞いをしてみた。

 いつもは無自覚なのが怖い――おっと言い過ぎた。

「だって、だって……わたし、あれは冗談だとばかり……!」

言葉遣いが昔に戻っている。可愛かわいいので指摘などしてやらない。

「んむ、それは余が全面的に悪い。日頃の素行だな」

 盛大におどけて笑わせてから、すっと真剣な顔になり、「そろそろ楽しみを独占するのにも飽きてきた……前にも増したる様々なる良き出会いを、そなたにも」

 自分の頭より少し下に娘の頭があるのをいいことに前髪を掻き分け、今日は額に接吻くちづけを落とした。

2015年 11月24日 14時45分 公開

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