新たな勇者、登場?
所変わって北方大陸『理知と知性の都』冒険者ギルド。
諸手続き(資格試験含む)をすべて終えたロデルは、スゴロクと共に広い館内を見回っていた。
「試験など楽勝だったであろう?」
「は。ラクショーでございました」
得意満面の首許には、大輪の花をあしらった『魔法剣士』の冒険者カードが揺れている。
ちなみに魔王軍の何人かも同様に登録を済ませたので、「何人か西方大陸に派遣するか――」などとスゴロクが呟いたとかナントカ。
「スゴロク様、ロデル!」
「ライザさま!」「おお、ヴォルフはどうした」
階下の闘技場で魔法を唸らせていた『智将』ライザが、息を弾ませて駆け寄ってきた。
「闘技場で戦士志望の荒くれと遊んでおります。亭主にとってもなかなか面白き土地のようで」
狼族とは思えないほど愛らしい(失礼)かんばせが緩む。野趣溢れる『拳将』ヴォルフとは好対照だ。これから冒険者カードを申請に行くのだと言って笑み、楽しそうに駆けて行った。
「審査員の苦境が目に浮かぶようだ」
「ふふっ、楽しいですねェ……」
「はは、ワルい顔だな」
「わたくしも魔族の子ですから。あ、そういえば」
「む?」
自由に座れるソファを見つけて座り、
「まだ、『勇者』の称号を持った方が来られていないのです、われらが城には」
「ふむ。そうそう居る者でもないからな、ルヴィは頑張っていたが……。まして、魔界に赴く余裕のある者となるとな」
「わたくしも調べたり、ローレンス師やシェリーさまに聞いたりして、大体の認識は出来ています」
だいたい調べた、ということは興味があるということだ、この子の場合。
「ふむ? お前を満足させるとなると実例が要るな。久々に制御装置を外すか」
本気で『網』を巡らせれば、力の大きな者が何処にいるかを大体掴むことも不可能ではない。
自力でやると超がつくほどしんどいが、仕組んだかのように温泉にいる。前述通り魔力の密度が高いのだ。
「この場でも構うまい」首から提げたロケットを外し、ロデルに預けて力を高める。
「近いぞ……もうすぐ会えるだろう、楽しみにしておくと良い」
本当に楽しみだな、と内心でワルい思考をめぐらせつつ立ち上がり、妻と共に階下を望む。
件の勇者のタマゴが、素手(つまり最も豪壮な状態)の『拳将』と必死で戦っている。
「ふふっ……『勇者』たり得る者の健気さよ、勇気あることよ」
スゴロクの血が沸き立っていくのが、なぜかロデルには理解できた。優しき『大賢者』の顔と、獰猛なる『魔王』の顔が同居して見える。
――ああ、どうしよう? どちらも大好きで、たまらなくなりそう……。「……勇者か……」
わたしがその名前で呼ばれたりしたら、もっとこの方を惹きつけられるのかしら。
変人魔王の紅い瞳が少年のような熱を帯びるのを、半猫は静かに見つめる。
2015年 11月21日 11時14分 公開




