表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/129

皇帝の怒り

「おーっと、やるじゃねのよ」

「お前、少しは使えるのか?」

 すり足で歩み出てきた中年の騎士は「本職は軍師だけどな。まぁしょうがねぇや」煙草たばこをふかして剣を構える。

 本当に使える男のようで、魔王がようやく引き抜いた短剣を一合も二合もいなし、切り結ぶ。

「悪いな――あのオッサンのせいでいろいろ台無だいなしだろ」後ろに逃げた小太りに聞こえない声でささやいてくる。

「ああ。まあ心配はいらんよ、ある程度は覚悟している」

「そいつぁイイね。だが、この国にゃヤツみてぇなのがゴロゴロしてやがっからな……もうちょっとだけ、『ワルい魔王』やってくんね?」

 よかろう、と口角を上げ、音高く相手の剣を折り飛ばす。

「悪役ってな、けっこう楽しいしな――こんな風によぉ!」

 魔王ついには哄笑こうしょうを上げ、使える限りの魔力を振るう。呼び出したのは誇り高き魔王軍……の幻影げんえいである。

 半狼の将軍ヴォルフガング、半熊の副隊長ベルンハルト、鳥人部隊長グィスパ、第二魔導師部隊長ライザ。

 威容いようは充分だが虚像の腕には何の武器もなく、ただ腕を組んで立っているだけだ。

 その姿を見ただけにも関わらず騎士のほとんどが恐怖で逃げ出し、ようやく魔王は小太りの指揮官に肉薄する。

 恐慌きょうこうきたした小太りは最新式の銃を取り出し――。

「もうよい! いい加減にやめよッ!」

 皇帝の一喝いっかつを受けて取り落とす。

「これを見てなお、戦争どころか私闘しとうにもならぬが分からんか!?」

女帝はげきしていた。憤然ふんぜんと立ち上がる。「音に聞く『魔王』足る者の力を、かくも侮りおって!」

 果敢かかんにも『魔王』へ挑み倒れ伏した若者らを助け起こし、つかつかと歩みを進める。

 若き皇帝はへたり込んだ小太りの襟首えりくびつかまえると(恐ろしいことに片手だ!)一息で立たせ、

「元老院議長の職をく。このヴィルヘルミナと戦いたくば、紛争地帯の馬鹿者ばかもの共にでも頼むがいい!」有無うむを言わさず『扉』を出現させ、その中へ放り込んでしまった。

 皇帝たる者の怒りの発露はつろはそれで終わった。速足で歩いてスゴロクとの距離をつめ、

「申し訳ない!」これだけは瀟洒しょうしゃ絨毯じゅうたんの上に躊躇ためらいもなくひざまずくと、長い髪を床にたゆたせてひれ伏す。

 手を上げられよ、と魔王は困惑気味こんわくぎみに言うが、首を振ってがえんじようとしない。歳若くも誇り高き皇帝は、言い訳ひとつもせずこうべれ続ける。

2015年 10月26日 10時18分 公開

2015年 10月27日 10時37分 誤字修正


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ