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再び帝都にて

 ちょくちょく報告に戻ってはいたが、「お久しぶりの感がありますな、陛下」現在スゴロクは帝国首都の王城を尋ねている。

 ちなみに、冒険者と随時戦いつつ力を抑えまくったまま旅などしていると人並みに疲れる(そこがまた楽しい)もので、本格的に休むと決めた日はこの地に宿を求めてもいた。

 すぐれた料理人は自国にもいるが、それにも増して徹底てっていしたこだわりともてなしの心が、帝国の少ない観光資源を強力に下支えしていた。

「まあ、私がやたらとせわしないせいもあろう。依頼していながらのていたらく、申し訳なく思っている」

ヴィルヘルミナはりんとしたかんばせに苦笑を浮かべ、「迂闊うかつだったよ。下手へた禅譲ぜんじょうなど受けるものではない」

ダルそうに玉座にもたれかかった。愚痴をこぼす相手は側近の美姫びきだけなのだろう。

「権力はご不要と?」

即位そくい以来の本音を申せばな。父の専横せんおうも許しがたいものであったゆえ、抑えたきよしもあったが」

 先帝せんてい放蕩者ほうとうものであったと、スゴロクも聞いている。復興の名を借りた貴族の横暴おうぼうと汚職を放置し、己の遊興ゆうきょうのみを追い求めた暗愚あんぐであった――というのは、娘である女帝によれば少々誇張されているとのことだが。

 社会や国家の仕組みを重んじる人間界において、君主の横暴や放蕩、遊興は間違いなく害悪がいあくだ。

 心身ともに早く自立し、自在に生きることを重んじ、変幻へんげん転変てんぺんをものともしない魔族との最大の差異さいである、とスゴロクも本の草稿そうこうに記したばかりであった。

「陛下はよく戦っておられる」

「……だといいが」

「騎士団領や古き城、山間の民族や洞窟に引きもっておる魔族にも尋ねてみた余が、いつわりを申すとお思いかな?」

「オイちょっと待ていつの間にそんなに行動した!?」

「珍品の売り買いなどをしとるとな、耳も大きくなるのさ」

 おのれで尋ねても行くが、話を聞いたとかレア物を買いたいとか言って探し当ててくる珍客の多さといったらない。

 どっかの女魔王がしゃべくってくれたものと推測はつくが、責める気になど毛頭もうとうなれなかった。「まあとにかく、決して諦めんことだ。悪いことにはならんさ」

 気障きざったらしく話を締めると、いつものごとく踵を返して――「おっと!」

 息せき切って走りこんで来るウィノナとぶつかりそうになって、どうにかこらえる。平生へいぜいにあり得ぬウィノナの慌てようであった。

どうやらひと悶着もんちゃくあったようだ。再び女帝を見る。凛とした瞳の奥が、確かに鋭く光っている。


 

2015年 10月21日 10時40分 公開

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