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知の冒険(1)

それからは再び目まぐるしく、真冬の一ヶ月も過ぎていった。

 もうすぐ新しい年を迎えようとする頃になると地下世界の探索行は一段落し、『魔人』の国づくりもも半ばまで目星がついていた。

 現在、スゴロクはその城をたずねている。

『さすがはワンダーダイス社の諸兄である』

「いえ、我が社はわずかなお力添えをしたに過ぎません」

 戦闘に必要な物資などはダイス社のライバル企業『マジカル・エクスプレス社』が確保し、集合および休息場所は北大陸の温泉郷が手を挙げた。

西大陸は精強なる騎士団を派遣し、南大陸や『魔境』の魔族とともに多大なる戦果を挙げた。

中央大陸は潤沢な資金と奨学の心意気で地下世界の調査・解明を熱心に行い、探索行の全体を強力に後援した。

 魔王の言葉どおり、つい先頃『魔王軍』より正式に移行したダイス社はサポートと局所的な戦闘を行った程度である。

 『熱き冬』と呼ばれた地下世界での探索行は、その余熱で以って人間界を未だ熱し続けているようだった。

『そう謙遜することもあるまい……。いや、確かに人間界の英傑らはすさまじい働きをしてくれた。此度の礼は、かの勇気ある者達に返さねばなるまい』

だが約束は約束だ、とニヤリ笑んで、ケーニヒは複雑な詠唱を終えた。

 時空が一瞬だけ歪み、気付いた時には、城を含む鋼の都市群が空に浮き上がっていた。

「これはっ! いつのまにこんな細工を!?」

『ルフタリアや潮の民の手法を真似てみた。これなら島を丸ごと貴兄らで使えるだろう?』

「ですが、これでは……」

『われらの同胞をすべて乗せるくらいの容積は確保してある。『魔人』はどこでも生きていけるし、』

 もったいぶってから、『大地に根を張って暮らすのにも少し飽いていたのだ、がははっ!』大口を開けて爆笑した。

「は、はぁ……左様でしたら、この島を使わせていただくとします」

『そうでなくてはな。細かいことは気にするな』

 この男こそは、自分を含めた王の中で最もごうたんなのではないだろうか。内心で肩をすくめた魔王は、城を移す段取りをせねばと決心した。

この勢いを駆れば何でもできそうな気がする。

 一方のケーニヒはスゴロクの逡巡など意にも介さず、ポンと両手を打った。

『おお、そうだ。こんな恰好だが一応艦船でな、巡航じゅんこう能力もある。ついでにどこかへ遊びに行ってみるか』

 色々と聞きたいこともあったが、気ままに振舞ふるまう王に任せてみる事にする。

 これだから冒険者は辞められない。

2016年 04月11日 13時32分 公開

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