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グルメ小旅行(2)

「んもー、スゴロクさまったら何ですか急にぃ!」

 はしゃいで応じる唇も鮮やかな水気を纏い、これまでにないほど艶やかに見える。

「照れているのか、可愛い奴だ」

「にゃは、バレちゃいましたね」

嗚呼ああ、でも嬉しいです」スープまでぐいと飲み干した丼をカウンターにおき、良人おっとを見つめる。

「いい女発言、ついにいただきました」

潤いを持った視線を見返すだけで精一杯になりかけた魔王は慌てて『らぁめん』を片付け、

「次行くぞ次」

「あ、はい」

足早に店を出る。

 旅程は一泊二日、勝負は明日に持ち越そうか。いや、だめだ。

目を閉じているように言う。

素直に従った娘の手を優しく取り、短く詠唱する。

 世界を改めて飛び回るうちに見つけた、秘密の場所へ。空の半ばまでを切り立つ岩に覆われた小さな小さな入り江で、彼は告げた。

「目を開けてみよ」

「……わぁっ!」

「いつか、月を欲しがったらどうするかと言っただろう?その手に渡すわけでもないのが惜しいが……」

 鏡のごとく磨き上げた魔法鉱物の指輪に、一面の星月夜が映り込んでいる。

 北国の離れ小島の強い風を『魔王の力』で妨げさせている。このくらいの演出は許してもらいたいところだ。

「受け取ってもらえるか。一応、余の持つ技術だけでこさえてはみたが」

「はい……スゴロクさま!」

うやうやしく受け取り、早速あるべき位置へと戴く。

「! ロデル=カッツェ……!」

 そして、魔王スゴロクは見た。

 『覚醒』を示す燐光が、娘の小さな身体を瞬く間に覆うのを。

2016年 04月11日 11時10分 公開

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