『勇者』対『勇者』(2)
「剣技では敵わないかぁ。練習したんだけどな」
「僕も負けない自信あるよ。ねーねーロデルっちさぁ、引き分けでいいからアレやってよアレ!」
結界があるから家は大丈夫だと聞いて安心し、剣を仕舞って意識を集中する。
『魔人』より伝来の、彼らの防御結界をも貫くと言われる奥義だ。
それを習得できない――県の絶技か魔法の秘技かを選ぶようになっている――シオンは、ワクワクしながら見つめる。
「……暴風の叫びあらん、氷雪の猛りあらん、劫火の唸りあらん、暗黒の静謐あらん。皆々以ちて古なる螺旋の韻律を織り上げん哉」
多重起動された巨大な魔法図形を制御し、まとめ上げる。
「疾き疾き雷電の翼にて運ばん、大地をば駆け巡りていざや知らしめん。
精霊等の歌よ混沌の唄よ、我が手をのみ剣をのみ黄金の導とせよ、我と共に道を開け。我が力を以って大いなる勝利の旋律となれ――此れを第八の盟約となす也!」
黄、翠、蒼、緋、黒、紫、最後は銀。
莫大な量の燐光が飛び交い、中空に巨大な螺旋となって織り上げられていく。
耳を澄ませば、遥か天遠くより雷が沸き立つのが聞こえる。
ゾクリとした。これから引き起こされる事象のイメージが広がる。八つの大魔法が同時に放たれるとは、どういうことなのか。
「これヤバいヤツなんじゃね!?」
一度、詠唱を聞いた時から見たい見たいと思っていたシオンだったが、慌てて剣を引き抜き、一瞬にして力を練り上げる。
「我が腕を以って断ち、力を以って斬る!」
『武』を極めた勇者のみが奮うことのできる、人類最高の剣技。龍の鱗を断ち、『魔王』の結界を貫き、使用者の力次第では時空さえ叩き斬れてしまう荒業だ。
いざ放つべく小さな身体に宿らせた気力は蒼白く螺旋を描いて具現化し、触れただけでも魔物を斬り裂き消滅させるほど鋭く強い。
「アハト・ヴェアトラーク!」
「オーラ・スラッシャー!」
二人の『勇者』の声と力が美しく和した。それぞれ選び取った奥義が同時に放たれ、ぶつかり合う――。
2016年 04月02日 13時55分 公開




