本の迷宮(1)
それからのスゴロクは、本の手掛かりを求めて忙しなく動いた。
各地の図書館を回ってみたし、魔界の友好国を訪ねもした。が、手掛かりは意外な場所にあった。
「昔の本ならいい所知ってるぜ。何で早く俺に言わねぇんだよスゴロク大先生よ」
「面目ない。世界を渡るのは楽しいが、足元の明かりを見落としていたよ」
「ま、別にいいんだけどな」
中央大陸の都市国家コルトシュタイン。もはや懐かしくさえらるその地に足を向けた時には、人間界は初冬に入っていた。アルフレッドは私室のカーテンを「寒いの苦手なんだ」と言って閉めた。
「街がずいぶん様変わりしたな」
「ああ。アンタを見習って、宮廷で商売を始めてみたんだ。武具とか織物とかな。
貴族どもを戦力で突いてやることばかり考えてたが……敵もさるもの、貿易が異常にうまいんでやんの」
「では、下世話な言い方だが儲けているのだな」
「そりゃもうウハウハよぉ、へへへへ!」
青年は咳払いをひとつして、「ウチの国の近くに不自然な砂漠があるの知ってるよな」
「ああ」
「あの街の一番でかい建物――行ったと思うけど、あそこは古代からずっとある図書館なんだよ。構造とか管理人があまりに特殊だから、知ってるヤツが殆どいないんだが」
「余もあれが何の施設かは秘匿されたままである。そうか、やはり近き明かりに全てがあることもあるのだな」
「だな」
鷹揚に頷きアルフレッドは無造作に『扉』を起動させた。
スゴロクの旅路は常にあっさりと繋がるものらしい。
「特にワナとかはないし、アンタなら楽しめると思う。ただ気をつけてくれ、何たって『迷宮』なんて呼ばれる場所だ――ヘタすると帰れなくなるぜ」
もっと話したいけど仕事なんだよなぁとボヤき、若き賢王は名残惜しそうに私室を去っていった。
魔王はその背に丁寧な礼の言葉を掛けた。
2016年 03月22日 14時39分 公開




