海底都市の王(3)
『……身体だけは丈夫だ、おれ達は。互いに爪牙を突き立てたとて生命果てることはない。把握している限り、人口そのものは一人も減少していない。『数列の魔王』とやらに力を借り、地下世界の位置をずらしてもらうこともできたしな』
この何百年もの間、『魔人』は地表に現れることがなかった。地下世界のみで『異世界』を構築し、そこで争い続けていたというわけだ。
『おれ達は、もっとも若い『魔人』だ。いちばん、かの月光を浴びていない三人だけが、この海底で暮らしてきた。他所の『里』に連絡すればいいのだが。生憎とその手段もない』
くるくると色の変わる龍の眼からは、どんな感情を読み取ることもできない。
『で、だ!』が、ケーニヒ王は明るい声で提案してくる。
『貴兄の力を、是非に借りたいのだ。ずれた境界を潜り抜けてやってきた変わり者の魔王のな』
「勿論です。まずは何を致しましょうか」
本を探してきてほしいという。
『人化の法』という秘術を以ってすれば、どんな外見でも最も人間に近づけるそうだ。
その探索任務は、ありがたいことに期限も手法も限らないとの仰せである。
「承知しました」
「私に、何かできることはありますか」
いつになく真剣なカーヤの問いかけに、
『そなたの力は人脈、人に依あ(よ)りて立つのが当世の『勇者』……カーヤ殿は、勇気溢れる者らをこの国へ――この小さき『世界』へ招いてくれ』
「わかりました! ありがとう、陛下」
『こそばゆいな、くくっ……。さてさて、これよりはこのケーニヒ! 一世一代の大勝負を始めるとしよう! むろん準備は必要だがな、がははっ!』
大見得を切り(自分でオチをつけ)、魔人は大口を開けて笑った。
『さぁ、今度はそなたらの話を聞かせよ』
切り替えの早い王である。魔王と勇者は苦笑して、高級そうな絨毯に腰を据えた。
2016年 03月18日 13時19分 公開




